日本脳炎ワクチン接種後の死亡事例について

日本脳炎ワクチン接種後に、10歳の男の子が死亡するという報道がありました。お子さんのご冥福をお祈りするとともに、原因が究明されることを望みます。

三つに分けて書くことにします。

原因は?

接種後五分ということなので、ADEMのように日本脳炎ワクチンの有効成分そのものが原因という可能性は低いと思います(蚊に刺されて五分で日本脳炎にはなりません)。

可能性は、アナフィラキシーショックや不整脈などが考えられます。報道によると、亡くなった児童はアレルギーはないものの特別支援学校に通っていたようです。お子さんが何かしらの薬を飲んでいて、その薬が不整脈を起こしやすく、お子さんが暴れて致死的不整脈を引き起こしたという、不幸な条件が重なった可能性もあります。

警察がワクチンとの関連を調べるということですが、明らかな犯罪でもない限り、警察が解明するのは無理なのではないでしょうか?

報道をめぐる疑問

お子さんは10月17日に亡くなりましたが、翌日には報道されました。通常の報告だと発表までもう少し時間が掛ると思うのですが、早い動きだと思います。

ニュースによっては、接種したクリニック名、院長名、さらにはインタビュー動画まで報道されています。普通のワクチン事故の報道ではまずあり得ない事です。

定期予防接種は市区町村長の責任において医師会が委託事業として行っているものですで、予防接種において重大な過失等がない限りは医療機関の責任は問わない契約を市と医師会は締結しているはずです。

重大な過失があった場合に医療機関名等が報道されるのは当然だと思います。しかし今回報道される限りでは、重大な過失があったとは思えません。美濃市や地域の医師会が表に出ず個人が矢面に立たされるというのは、接種する側としては当惑を覚えます。

本日、世田谷区保健所感染症対策課に確認しましたが、もし世田谷区で同じような問題が起きた時はきちんと対応するということでした。

これからどうなるの?

2005年に日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えの通知が2010年まで続きました。しかしワクチンが無くなっても日本脳炎がなくなったわけではないので、日本脳炎の感染例が報告されました。

今回厚生労働省はそういったアクションを今のところ取らないようです。世田谷区保健所感染症対策課にも確認しました。確かに今のシーズンで日本脳炎ワクチン接種を急ぐ必要はありませんが、当院では保護者に説明の上日本脳炎ワクチンは続けようと思います。

もちろんワクチンが原因と考えられる報告が続けば、今後の接種について考える必要があります。問診の強化やアナフィラキシーや不整脈に対応できる環境を整えて行く必要があります(現在ワクチンを接種する場合アナフィラキシーに対応する必要はありますが、AEDなどの除細動器を用意する必要はありません)。

最後にとある医師会の先生が、市長と医師会会員に宛てる予定の文章をアップします。許可は得てます。

 市長殿
                   地域医療委員長 ○○

前文(適当に作成してください)
さて、岐阜で予防接種後に接種児童が急死する事故があったようです
。予防接種と急死との間の因果関係はまだ不明です。しかしこの死亡事故がおきた医療機関名が報道され、映像も流れています。
定期予防接種は市区町村長の責任において医師会が委託事業として行っているものです。予防接種において、重大な過失等がない限りは医療機関の責任は問わない契約を市と医師会は締結しています。重大な過失があった場合に医療機関名等が報道されるのは致し方ないと思いますが、今回のように事態が不明のうちに公表報道されたのは大変遺憾です。
私どもは事故がないように十分な注意を払うように会員医療機関に指導しておりますし、将来にわたっても事故がないことを祈っています。しかし万万が一の事故の際に、各市長様におかれましては適切な責任をとっていただけますよう、お願い申し上げます。

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会員各位
              地域医療委員長  ○○

前文(適当に作成してください)
さて、岐阜で予防接種後に接種児童が急死する事故があったようです。予防接種と急死との間の因果関係はまだ不明です。しかしこの死亡事故がおきた医療機関名が報道され、映像も流れています。
定期予防接種は市区町村長の責任において医師会が委託事業として行っているものです。予防接種において、重大な過失等がない限りは医療機関の責任は問わない契約を市と医師会は締結しています。重大な過失があった場合に医療機関名等が報道されるのは致し方ないと思いますが、今回のように事態が不明のうちに公表報道されたのは大変遺憾です。
会員各位におかれましては事故がないように今後とも十分な注意を払っていただきたいと思います。万万が一の事故の際には、重大な過失がない限りは事故の責任は各市市長にあります。定期予防接種においては医師会からの委託事業であることを覚えておいていただいて、万一の事故の際には医師会にも一報をいれていただくとともに各市保健センターにご連絡ください。被害が生じた患者には誠意をもって対応していただけますようお願いします。

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