また麻疹・風疹騒動が起こる?ー「積み残し」の受難ー

日本の麻疹流行はようやく抑えられそうです。ワクチン流通も少しずつ改善しているようです。

 しかし3年前(平成25年)、日本で風疹が大流行し、全国でMRワクチン(麻疹+風疹ワクチン)が無いと言われた騒動を皆さん覚えているでしょうか?

 当時はアメリカのCDCが日本の風疹流行の状況を、Alert - Level 2 Rubella (German Measles) in Japan と注意喚起を促しました。この注意喚起をみて東京ディズニーランド行きを諦めた妊娠可能年齢の女性がいたと聞いています。

 どうしてこういうことを繰り返すのか、というと、日本には予防接種を十分に接種していない世代が多いからです。

 麻疹ワクチンの変遷では以下のとおりです。

  • 昭和41年:KLワクチン(K(不活化)とL(生)ワクチンの併用)による任意接種の開始
  • 昭和44年:KLワクチンに代えてFLワクチン(高度弱毒生ワクチン)による予防接種開始。(任意接種)
  • 昭和53年:定期接種(1回)の開始(対象:1-7歳半)
  • 昭和63年:麻疹単独ワクチンまたはMMRワクチンを選択制で接種開始
  • 平成5年:MMRワクチンの接種終了
  • 平成18年:定期接種(2回)の開始(対象:1歳、就学前)
  • 平成20年:中学1年生、高校3年生に相当する年齢の者に2回目の補足的接種開始(5年間の時限的措置)

 風疹ワクチンについては、少し長いですが逗子市のサイト(風しんワクチン接種歴の学年・年齢のめやす)から引用します。麻疹ワクチンでは行われた年度、風疹ワクチンでは生まれた時期で区分していることに注意してください。

平成14年生まれ以降の年齢

 平成18年(2006年)度からはしか(麻しん)とともに2回接種制度が導入され、1歳時と小学校入学前1年間幼児に原則として、麻しん風しん混合(MR)ワクチンが定期予防接種として実施されている年齢です。

平成13年生まれ~平成2年生まれの年齢

 平成19年(2007年)から始まった10代~20代を中心とするはしか(麻しん)の全国流行を受けて、風しんは麻しんとともに対策をとるべき病気として、平成20年(2008年)度~平成24年(2012年)度までの5年間、中学1年生と高校3年生相当の年齢の者に麻しん風しん混合(MR)ワクチンを定期接種として追加実施した年齢です。

昭和62年10月1日生まれ~平成2年4月1日生まれの年齢

 予防接種法の改正により、生後12か月~90か月(7歳6か月)未満で、1回の風しんワクチン定期接種が開始されました。集団接種から個別接種となり接種率が高くない年齢と言われています。

昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれの年齢

 平成5年(1993年)にMMR(麻しん・おたふく・風しん)ワクチンが中止され、未接種であった年齢です。平成7年(1995年)の予防接種法の改正により経過措置として、この年齢の人に対して平成15年(2003年)9月30日の間まで風しんの予防接種が実施されましたが、接種率は低いと言われています。

昭和54年4月1日以前に生まれた男性

 定期予防接種の機会はありませんでした。

昭和37年4月2日生まれ~昭和54年4月1日生まれの女性

 中学生時に学校で集団定期予防接種を行っていました。

昭和37年4月1日以前に生まれた女性

 定期予防接種の機会はなく、自然流行という形で免疫を獲得する時代でした。

 以前も書いたように、MRワクチン3期・4期の接種率は高くありません(特に世田谷区は…)。

 平成2年4月2日生まれ(平成20年度でMR第4期)から平成12年4月1日生まれ(平成24年度でMRワクチン第3期)では麻疹・風疹ワクチンは1回しか接種しない可能性がありますし、それより以前の世代ではさらに接種率が低くなるでしょう(更に上の世代だと、自然感染率が上回るでしょうが)。

 こういった感受性のある(感染しやすい)「積み残し世代」が成人化し、行動範囲が広がると、当然のことながら感染が広がることがあるのです。

 残念ながら厚労省は、ワクチン接種が不十分な世代に対して十分な対策をしているとは言えません。国内のワクチンメーカーは財政的基盤が必ずしも強靭とは言えず、急な増産に対応できるわけはありません。海外では豊富にあるMMRワクチン(麻疹+風疹+おたふくワクチン)を厚労省が輸入し接種してくれればいいのですが、何故かしません(MRワクチン「偏在」問題と積み残し世代問題)。

 MMRワクチンは医療機関の責任で個人輸入が出来ます。しかし、輸入するには時間がかかります。

 人間の心理として、マスコミで取り上げられ「不足」と言われるほど欲しがるものです。「麻疹(風疹)流行なのに、ワクチンが足りない」と言われるほど接種率が上がるものですが、その「情熱」はすぐに冷めてしまいます。

 3年前も風疹流行なのにワクチンがないということでMMRワクチンを輸入した頃には風疹についてそれほど騒がれなくなり、大量の在庫を抱えてしまったというクリニックは少なからずあります。

 今回麻疹の流行は収束しそうですが、積み残し世代について国としてビジョンを示していない以上、再び麻疹・風疹が流行する可能性は十分にあります。

 オオカミ少年ではありませんが、今まで赤字覚悟でMMRワクチンの個人輸入に踏み切ったクリニックが、また協力してくれるかは、非常に疑問です(当院では細々としますけど)。

おまけ:厚生省(厚労省)のトラウマ

 日本で麻疹・風疹・おたふくの対策が十分に進んでこなかったのは、昭和63年(1988年)に始まったMMRのトラウマが行政側にあるのかもしれません。大きく分けてMMRワクチン禍はイギリスと日本に分けられます。イギリスのMMRワクチン禍は「捏造」でしたが、日本でのMMRワクチン禍は本物でした。色々とありますが、

日本のワクチン行政が世界標準から大きく後れを取ったのは、MMRワクチンの副作用よりも、副作用への厚生省の対応の悪さによると思われる。

(後述の「MMRワクチンの中止」より)

 と言うのは本当でしょうね。MMR訴訟で国や製薬会社の敗訴が続き、ワクチン行政は後ろ向きになってしまいました。

 

参考資料

厚労省「はしか」根絶する気なし
またも予防接種空白層を無くす好機を失う。国民の健康より守りたいものって何?
https://facta.co.jp/article/201611026.html

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