チャイルドヘルス:ワクチン忌避にどう対処するとよいか教えてください

この度ご縁があり、チャイルドヘルス2020年9月号(特集:ワクチン・ギャップ解消後のワクチンQ&A)にコラムを書かせていただきました。

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 名のある先生方と同じ雑誌で執筆できたことは、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

 当院は引き続き子どものための医療情報提供に心がけていきます。よろしくおねがいします。

別刷りあります

 2020-09-24、別刷りが届きました!!
 たくさん届いたので、欲しい方はお声をおかけしてください。

【補足】リスク認知について

 記事の中で「リスク認知因子10箇条」を紹介しました。紙面の関係で具体例を挙げることはできませんでしたので、こちらに書くことにします。ちなみにリスク認知自体は、6年前のブログで取り上げています。

1. 恐怖心
 恐怖を感じる事態に、人は強くリスクを感じます。特に、激しい副作用などが動画としてメディアに出ると、リスクとして印象に残ります(アンカリング効果)。たとえ、副作用が出る確率は病気によって起こる不具合よりも低いのに、リスクを感じてしまうのです。

2. 制御可能性
 何らかの形で自分がコントロールできるリスクは、そう大きく感じませんが、コントロール不能の副作用は、非常に大きく感じられます。「ワクチンによる副反応は一生治らない」と言われれば、恐怖を感じてしまいます。

3. 自然か人工か
 人工的なワクチンよりも、自然から得られた「免疫力」のほうが安全でリスクが少ないと考える人もいます。しかし、自然で得られる免疫のほうが確実で安全という保証はありません。また、「免疫力」という言葉自体が曖昧な言葉です。免疫を上げ過ぎたら、自分自身の体も攻撃対象になってしまいます(自己免疫疾患)。

4. 選択可能性
 他人に押し付けられたリスクは自分で選び取ったリスクよりも高く感じます。「国や医療関係者からなかば強制的に接種させられて、副反応が起きた」という話を聞けば、それだけリスクを感じやすくなります。

5. 子どもの関与
 自分の子どもに関することは、リスクを過大に感じます。多くのワクチンは子どもに接種するものですよね。

6. 新しいリスク
 今まで見知ったものについては、人はリスクを低く見積もりがちですが、知らないことについては非常に怖く感じるものです。ワクチンで今まで知らていなかった副反応が起きると言われれば、接種したがらなくなる人が出てくるのは当然です。

7. 意識と関心
 また、大きく報道されているほどリスクを強く感じるということもあります。「弱者に寄り添う」という使命感があるのかもしれませんが、一部の報道姿勢には疑念を感じるものもあります。

8. 自分に起こるか
 当然ではありますが、自分や自分の関係者に累が及ぶ可能性が少しでも感じられると、リスク認知は急激に高まります。HPVワクチンで言えば、母親が娘にHPVワクチン接種をためらう理由でもあります。

 母親が娘にHPVワクチンを接種するという「自分の判断」でなにか問題が生じた場合、母親は自分がした意思決定を後悔することを恐れているのです。逆に子宮頸がん検診は「娘の判断」なので、母親自身の心理的負担は軽減できます。
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 母親がどうしてこういう判断をするかというと、かつての報道が記憶に残っているからです(アンカリング効果)。

9. リスクとベネフィット(利益)のバランス
 これも当たり前ですが、リスクに対して何らかの利益があれば、人はそのリスクを実際よりも低めに感じます。何の利益もない、あるいははっきりしないとなれば、誰もそのリスクを取りたがりません。ワクチンによる薬害を訴える団体の中には、ワクチンによる効果を必要以上に低く評価することがるのは、残念なことです。

10. 信頼
 我々をリスクにさらす相手(国や公共機関など)や、リスクについて説明する者に信用が置けなければ、リスクの感じ方は高まります。ワクチンによる薬害を訴える団体の中には、国や医療関係者、製薬会社の信頼感を必要以上に低く評価することがあるのは、(略)。