接種間隔制限解除!!その背景は?

 2020年10月からロタワクチンが公費接種になるのと同時に、予防接種の接種間隔制限解除になります。
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(出典:第45回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和元年度第13回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催))

 今まで生ワクチンを接種したら、次のワクチンは27日後、不活化ワクチンの場合は6日間、一律接種間隔を空けなくては行けないものを、注射の生ワクチン同士だけ接種間隔を開ければ良いことになりました(日本だと、BCG、MRワクチン、水痘ワクチン、それにおたふくワクチンです)。
注:同じワクチン同士の場合は、必要に応じて接種間隔を開ける必要があります。また小児ではありませんが違う種類の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスとプレベナー13)の接種スケジュールも注意が必要です。

 実は、注射の生ワクチン同士だけ接種間隔を開ければ良いことは以前からわかっていましたが、日本ではなかなか変わりませんでした。

 調べる限り平成6年(1994年)にはこの接種間隔制限がありました(こちらの文章では接種間隔は1ヶ月、1週間などと表記していますが、細かい話ですが、この定義では民法上問題があるため、27日、6日間となりました)。

予防接種の実施について:(平成六年八月二五日) (健医発第九六二号)

 平成24年(2012年)に日本小児科学会が、異なるワクチンの接種間隔変更に関する要望書を出しています。一部引用してみます。

…平成6 年の予防接種法改正時に、生ワクチン同士の接種間隔に関する上記禁忌規定はなくなり、予防接種実施要領(局長通知)の中で、生ワクチン接種後は1 ヶ月以上(平成17 年度以降は27 日以上)、不活化ワクチンやトキソイド接種後は1 週間以上(平成17年度以降は6 日以上)接種間隔をあけることとされた。

我が国では、接種後に偶発疾患が生じたときに、続けて接種したためと誤認されることを防ぐために、生ワクチンの副反応がでやすい接種後約4 週間、不活化ワクチンの副反応がでやすい接種後約1 週間、それぞれ間隔をあけて他のワクチンを接種する方がよいとする(各ワクチンの副反応の出現時期が重ならないよう観察期間を置く)考えから、生ワクチン同士の接種間隔に加え、生ワクチン接種から不活化ワクチン接種まで4 週間以上、不活化ワクチンから他のワクチン接種まで1 週間以上あけることが追記された。

 アメリカなどでは遅くても2009年には合理的な接種間隔を選択していたことがわかります。

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 日本で接種間隔制限が解除になったのは医学的理由ではなく、ましてや10月1日から予防接種の接種間隔制限撤回しても安全になったというわけでもなく、ロタワクチンが定期接種化されるに当たり接種スケジュールに無理が生じるから、というのは言いすぎでしょうか?

 同じことが同時接種でもありました。今まで日本では同時接種はほぼ行われていなかったのですが、Hibワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンが認可されて乳児で接種するワクチンが増えたのに伴い、同時接種が行われるようになりました。
 その後「同時接種で乳児死亡が多発」と一部のマスコミが報道し、2011年に一時的にHibワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンについて、当面接種を停止するよう通知が出されたことがありました。

 その後の厚生労働省会議では、解剖所見やカルテ、疾病の経過や基礎疾患の重篤度等について可能な限り詳細な情報を入手したうえで評価を行い、直接的な因果関係がないことから同時接種の再開が決められました。
 このうちの多くは睡眠中に亡くなっていて、約7000人に1人の赤ちゃんが原因不明で亡くなってしまう「乳児突然死症候群(SIDS)」ではないかというのが大勢の意見です。ちょうどワクチンを受けた時期と重なってしまったのでしょう。同時接種が普通に行われている今はSIDSの数は減っており、同時接種と突然死の関係は無さそうです。

(詳しくは森戸やすみ先生と私の共著:小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり! (専門家ママ・パパの本)を御覧ください。

 行政の仕組みはよくわかりませんが、同時接種や接種間隔制限の問題が日本でなかなか解消できなかったのは、「もし制限を解除した後に悪いことが起きれば、全部同時接種(接種間隔制限撤廃)の制限を解除したせいだ」という意見(味方によっては脅し)があったからだと思います。

 今現在もワクチンの同時接種を制限していたり、接種するまでの数日間の体温をチェックする必要がある施設があるのは事実です。
 これらの行為にちゃんとした理由(エビデンス)があればいいのですが、私の知る限り科学的根拠はなさそうです。また、そういった「縛り」のために保護者や子どもたちに不利益がかかるのは、残念なことです。