子どもの、新型コロナの神経学的合併症

そろそろ当院の夏休みもお休みです。

ピークは超えつつありますが、第七波では医療崩壊と呼ばれる状況まで達しています。
原因は色々とありますが、

  1. BA.5系統の台頭
  2. 「熱中症対策にマスクを外すべき」の誤謬と誤解
  3. 政府が行動制限しない
  4. ワクチン接種率(3回目・子ども)が低い
  5. 政府がきちんと伝えない
  6. 報道もきちんと伝えない

等があるかなと思います。

特にBA.5系統は感染力も強く、また今までと違いお子さんにも感染しやすくなりました。

今まではお子さんは感染しにくく軽症で後遺症も起こりにくいとされてきましたが、BA.5系統では、それらが覆されています。

一つは国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センターの発表です。

研究対象:2021 年 8 月~2021 年 12 月(デルタ株流行期)と 2022 年 1 月~3 月(オミクロン株流行期)の間に COVID-19 Registry Japan1 に登録された 18 歳未満の新型コロナ患者を対象としました。

研究方法:COVID-19 Registry Japan に登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析しました。

研究結果:

  • 期間中に研究対象となった 18 歳未満の患者はデルタ株流行期 458 名、オミクロン株流行期 389 名でした。
  • 入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が 8 歳、オミクロン株流行期が 6 歳でした。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあります。(表 2)
  • オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて 2~12 歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くありました。一方で、6 歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかったことも分かりました。(表 1)
  • 酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったですが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はありませんでした。(表 3)
  • 新型コロナワクチン 2 回接種を終えていた患者は、研究対象 847 名のうち 50 名(5.9%)でした(接種の有無が不明であった患者は 57 名いました)。この 50 人は、いずれも軽症でした。
  • ワクチン接種歴の有無が判明していた 790 名の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者 43 名のうち、新型コロナワクチン 2回接種を受けていた患者は 0 人でした。
    https://research-er.jp/articles/view/113494

もう一つは米国小児科学会(APP)で出た論文です。小児におけるCOVID-19と神経学的合併症を調査したものです。
https://publications.aap.org/pediatrics/article/doi/10.1542/peds.2022-058167/188743/COVID-19-and-Acute-Neurologic-Complications-in

入院15,137人のうち、神経学的合併症の発症率は7%でした。最も頻度の高い神経学的合併症は、熱性けいれん・無熱性痙攣・脳症などでした。
神経学的合併症のある小児では,合併症のない小児と比較して,病院での 入院日数、ICU 入室、ICUでの入院日数、30 日再入院、死亡、病院経費が高かったとしています。
結論で著者は、COVID-19で入院した小児では神経学的合併症がよく見られ、院内での悪化転帰と関連しているとしています。また、今回の知見は小児,特に神経学的合併症を有するような高リスク集団におけるCOVID-19の予防接種の重要性を強調しているとしています。

成育の論文では「ワクチン接種が子ども達を新型コロナウイルス感染症の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している」とやや控えめなのは、症例数の違い(合計847人と15,137人)の違いかもしれませんが、成育の論文はデルタ流行期・オミクロン流行期で分けているので、直接的な比較はできません。

しかし、オミクロン(BA.5系統)は子どもでもかかりやすく場合によっては死亡例も含めて深刻な神経学的合併症を引き起こしやすいものの、ワクチンによって合併症を防げる可能性があると思います。

今は夏休みで子どもの感染が下がり気味ですが(その代わり、里帰りクラスタ・阿波おどりクラスタと思われる発生が報告されています)、夏休み明けはどうなるか不安です。

残りわずかの夏休みですが、接種できる人は早めにワクチンをお願いします。

追記
マスクや自粛をいつまですればいいんだ!!という声が出てくるかもしれませんが、個人レベルでは防げなかったこととして、今回はBA.5 の台頭などタイミングが悪かったことと政府が明確な方針を示さなかったことが挙げられると思います。

また、今回ワクチン3回目や子どものワクチンの接種率の接種率が低いままだったというのも残念でした。

言えることは、夏休み明けも同じままであれば、第8波は比較的早めに来るだろう、ということです。

追記2
この状況で、5-11歳の3回目や生後6ヶ月から4歳のワクチンが始まらないという状況に、不安をいだいています。

アメリカのCDCのページを貼り付けておきます。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/children-teens.html