小児のアトピー性皮膚炎とデュピクセント・ミチーガ
小児のアトピー性皮膚炎に対する新しい治療薬のご紹介
最近、当院では小児のアトピー性皮膚炎に対して、デュピクセントやミチーガといった新しい注射薬を導入する機会が増えています。実際に使用した患者さんも増えており、臨床現場での実感をお伝えしたいと思います。
デュピクセント・ミチーガとは?
これらはいずれも、インターロイキン(IL)という免疫に関わる物質の働きを抑制することで、アトピー性皮膚炎の症状を和らげる生物学的製剤です。
デュピクセント
- IL-4およびIL-13の働きを抑制し、皮膚の炎症やかゆみを軽減します。
- 生後6か月以降の乳幼児から成人までが対象です。
- 特に顔や首に症状が強く出るタイプには適応しやすい印象です。
ミチーガ
- IL-31の働きを抑制し、かゆみを和らげます。
- 6歳以上の小児および成人が対象です。
- 特に強いかゆみが主な訴えである場合に有効です。
※いずれの薬も保険適用の厳格な条件があるため、すべての患者さんに使用できるわけではありません。
医師としての所感
どちらも非常に効果的な薬剤ですが、次のような印象を持っています。
- 基本的にはデュピクセントで幅広く対応可能です。
- アトピー性皮膚炎の皮疹が軽度でもかゆみが強く、生活に支障がある場合には、ミチーガのほうが適していることもあります。
注射薬であるため痛みを伴いますが、当院ではできるだけ痛みを軽減する工夫を行っており、現在のところ痛みが理由で継続できなかった患者さんはいません。それだけ効果が実感できる治療法であると感じています。
ワクチンとの関係について
これらの生物学的製剤とワクチン接種の関係について、日本国内の明確なガイドラインはまだ整備されていません。しかし、米国CDCでは以下のような注意喚起があります。
「不活化ワクチンおよび生ワクチンは、これらの治療を開始する2週間以上前に接種すること。生ワクチンは治療終了後3か月間は接種を控えること。
(CDC “Best Practices for Altered Immunocompetence”, 2024)」
https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/imz-best-practices/altered-immunocompetence.html
また最近では、デュピルマブ(デュピクセントの有効成分)使用中のワクチン接種に関するシステマティックレビューと専門家の意見が発表され、以下のような見解が出されています。
「デュピルマブ投与を受けている患者におけるワクチン接種は、おそらく安全かつ有効である」
(Lieberman JA, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2024;133(3):286-94.)
今後、日本国内でもより明確な方針が示されることが期待されます。
ご不明な点や導入をご希望の際は、いつでもご相談ください。お子さんの皮膚の状態や生活の質(QOL)を一緒に改善していければと思います。