デング熱について
先日0歳児のお子さんを持つ保護者から、微熱+発疹で「デング熱」ではないですか?と問い合わせがありました(結局、あせもでした)。
現在のところ、日本での感染源は限られているため、世田谷区にいる限りは感染の危険性はないと診ていいでしょう。
デング熱ウイルスについて
デング熱ウイルスは4タイプあります。同タイプには終生免疫あり、一度感染すると同じタイプには感染しません。しかし、他のタイプには感染性があります。つまり、4回感染する可能性があります(感染2ヶ月は他タイプに交差免疫があり、その間だけ感染しにくくなるようです)。
デング熱ウイルスの感染性
ヒトがデング熱ウイルスを持った蚊に刺されて発症するまでの期間(潜伏期間)は3-14日です。全てが発症するわけではなく、75%が不顕性感染(症状が出ない)と言われています。症状がでる1-2日前から一週間ほど感染性がありますが、不顕性感染でも感染性があります(ウイルス血症)。逆にその期間を過ぎると、感染性はありません。
ヒト-ヒト感染は通常では存在せず、デング熱ウイルス含有血液を吸った蚊が感染性を持つまで8-12日かかるということです。現在発症している(発症の可能性のある)方から感染することはないし、その方を吸血した蚊から直ぐ感染するわけではないですね。
デング熱は世界で年間一億人が感染しており、日本でも毎年200人ほどが感染しています(海外からの持ち込み)。感染対策は必要ですが、感染者を必要以上に恐れる必要はありません。
デング熱ウイルス媒介蚊
海外では、ネッタイシマカ Aedes aegyptiが原因ですが、日本には存在しない蚊です。その代わり、ヒトスジシマカAedes albopictusが日本では媒介します。温暖化の影響もあり、生活圏が広がっています。日中、特に朝と夕方に活動性が高まります。
日本ではアカイエカCulex pipiens pallensも多くいますが、こちらは感染性はない模様です(ただし、ウエストナイルウイルス、バンクロフト糸状虫などの感染性はあります)。
対策は?
蚊に刺されない対策が必要です。疑わしい場所に行く時には、暑くても長袖長ズボンが基本です。
虫除けは蚊取り線香やDEETが基本です。DEETは一般的な虫除けスプレーの成分です。神経毒性があると言われており、日本では生後6ヶ月以降での使用が認められています。しかし、最近の研究では神経毒性は否定されており、アメリカでは生後2ヶ月からの使用が認められています。CDCのファクト・シート(PDF)
しかし、乳幼児の場合、手・口・目の周りに塗るのは避けましょう。口に入れば毒性があります。
DEETの濃度について
一般に濃度が濃ければ有効期間が長くなります。日本では規制により最高濃度は12%で、4-6時間程度です。
海外ではもっと高濃度のDEETが市販されており、有効期間はもっと長いです。日本でも規制の見直しが必要でしょう。
当院で扱っている輸入品のDEETは34.34%で12時間持ちます。渡航者向けです。日比谷クリニックの解説が詳しいです。
Ultrahton(PDF)
参考サイト
国立国際医療センター国際感染症センターの忽那先生の解説です。
東京医科大学病院・渡航者医療センターによる解説です。
当院のブログです。
おまけ
「代々木公園以外でもデング熱の感染疑い症例が確認されたため、世田谷区では9月5日にデング熱対策本部を立ち上げました。」世田谷区:デング熱の国内感染症例について
去年風疹が流行し先天性風疹症候群のお子さんが少なからず報告されていたというのに他の区と横並びの政策しかしてこなかった世田谷区としては、随分早い行動です。どのような専門家の意見を参考にするのか、区民としても区の小児科医としても、見届けさせてもらいます。
追加(2017-06-24)
新しいブログを書きました。
デング熱再びーー子どもの虫よけにはイカリジンを
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