不活化ポリオワクチンの追加接種をいつすればいいか

 今年の9月から、不活化ポリオワクチンの定期接種が始まりました。早い人では、すでに3回目の初回接種を済ませた方もいると思います。問題になるのは、追加接種(4回目)のタイミングです。

 当院で輸入の不活化ポリオワクチンを接種していたときは、4回目は4歳になってからでお願いします、と説明していました。他方、厚生労働省の方針では半年以上経ってからとなっています。4回目の接種時期で随分違いがあり、色々と混乱が生じました。「こんなに接種間隔が空きすぎると、免疫がつかなくなるのでは」と思う人もいるかも知れません。

 少し長くなりますが、追加接種について説明しようと思います。

追加接種は4歳以降にする必要がある

 不活化ワクチンは、追加接種が一般的には必要です。

各国の不活化ポリオワクチンのスケジュール

 各国の不活化ポリオワクチンのスケジュールを示します。色々とバリエーションはありますが、ポイントは

  • 4回以上接種している
  • 最後は4歳以上に接種している

です。長期免疫を保つためには、不活化ポリオワクチンの追加接種を4歳以降にする必要があります。厚生労働省も4歳以降の再接種を考慮中だと聞いています。

どうすればいいの?

ポリオとポリオワクチンの基礎知識ではこのように書かれています。

不活化ポリオワクチンは、初回接種3回、追加接種1回、合計4回の接種が必要です。

不活化ポリオワクチンの標準的な接種年齢・回数・間隔は、次のとおりです。

  • 初回接種(3回):生後3か月から12か月に3回 (20日から56日までの間隔をおく)
  • 追加接種(1回):初回接種から12か月から18か月後(最低6か月後)に1回

なお、この期間を過ぎた場合でも、生後90か月(7歳半)に至るまでの間であれば、接種ができます。過去に生ポリオワクチンを受けそびれた方も、対象年齢内であれば、不活化ポリオワクチンの定期接種を受けていただくことが可能ですので、接種されることをおすすめします。

 追加接種は初回接種から12ヶ月から18ヶ月後が標準。でも、それを超えても7歳半前であれば定期として接種できるという意味でしょう(自治体の堅物役人が「初回接種から12ヶ月から18ヶ月後が標準だから、それを超えたら定期接種と認めない、なんて勘違いしないことを祈ります)。

 二通りの方法があります。

  • 厚労省の通りに、一年ほど空けて追加接種。ただし、4歳になったら再接種をする可能性があります。
  • 4歳まで待って追加接種。

 接種医と相談した上で、どちらかを選んでください。

[check]日本のスケジュールで接種してきた方は補足2をご覧ください(2013/11/27)

 ただし条件があります。このスケジュールは単独不活化ポリオワクチンのものです。四種混合ワクチンの場合は、追加接種を早めにお願いします。今後4歳以降の不活化ポリオワクチン(あるいは四種混合)の追加接種の話が出てくると思います。

補足(12月17日)

 海外では初回接種の間隔にかなりゆとりがありますが日本では三種混合ワクチンに合わせているため、接種間隔が短いです。今後四種混合ワクチンが広まれば、ポリオワクチンだけをあとで接種するというのは難しくなってきます。
 個人輸入で不活化ポリオワクチンを接種していた方は4回目は4歳以降でいいと思いますが、すべての接種を2012年4月からの定期接種として行った方は、早めの接種がいいのかもしれません。

初回接種同士の間隔について

 輸入の不活化ポリオワクチンをしていた医療機関では、初回接種で2-3回の接種間隔をかなり空けていたところもあったと思います。前項を読めばわかりますが、医学的には問題ありません。また、厚生労働省も「単独の不活化ポリオワクチンは、初回接種として20日以上の間隔をおけば接種可能であり、接種間隔の上限はありません。」としています(12月17日追加:個人的には20日の間隔は短いと思います。少なくとも27日開けましょう)。

補足:海外で不活化ポリオワクチンの初回接種が済んでいた場合

 先日ドイツで0-1歳の間に4回不活化ポリオワクチン(混合)を接種した方が来ました。その時点で7歳2ヶ月です。当然のことながら追加接種が必要です。

 平成24年6月1日に厚生労働省が出したQ&A集には、こう書かれています。

  • 接種間隔(有効性) ・質問内容
     生ポリオワクチンの接種を避け、既に任意で不活化ポリオワクチンを1~4回接種されている方もいる。これまでの情報では、任意接種もカウントしたうえで不足する回数を接種することとなっているが、保護者がどうしてもと希望された場合は、法令で定める対象年齢の間であれば、また1回目から定期接種として実施しても差し支えないのか。
  • 回答
     医師の判断と保護者の同意があれば、国内未承認のワクチンは定期接種として数えず、不活化ポリオワクチンを定期接種として4回受けることは可能である。

 世田谷区では「初回一回目として」接種することができます。

 詳しくは、ふたばクリニックの厚労省Q&A33(2012.06.01)に関してを御覧ください。

 不活化ポリオワクチン導入に関して、厚生労働省は柔軟な対応をしていると思います。ただ、自治体によって解釈のバラツキが生じる可能性があります。詳細は、居住地の保健所・定期予防接種担当課にご確認下さい。  

補足2:日本スケジュールでの4回目(2013/11/19)

 国認可の不活化ポリオワクチンがでて一年二ヶ月が過ぎます。3回の初回接種がおわり、そろそろ追加接種の季節になってきました。

 国のほうでも4歳以降の追加接種(5回め)を本格的に考えていると聞きます。日本での不活化ポリオワクチンのスケジュールは、海外と違って接種期間が短いです。不活化ワクチンの場合、同じ種類なら接種間隔が長いほど長期免疫が期待できます。接種期間の違いが、長期免疫に微妙な影響をおよぼす可能性も有ります。5回目の接種をするかもしれないという条件で、不活化ポリオワクチンの4回目を(一年以上間隔を開けたうえで)そろそろした方がいいでしょう。これは四種混合でも同じです。

補足3:4-6歳に二回目の追加接種を(2016/08/03)

 「補足2」を書いてから3年近く経ちました。震災後3ヶ月経っての開院当初から不活化ポリオワクチンを接種し続けてきました。開院当初に不活化ポリオワクチンを接種しに来た赤ちゃんたちがそろそろ小学生になるかと思うと、感慨深いものがあります。

 2016年2月1日に不活化ポリオワクチンのサノフィ株式会社は「サノフィ、イモバックスポリオ®皮下注4~6歳の日本人小児における2回目の追加免疫の抗体価、および安全性データを取得」というプレスリリースを出しました。私が今まで伝えてきた「追加接種(4回目)を早めに接種した場合は、4歳以降にもう一回接種が必要」という話です。

 しかし、この二回目の追加接種には大きな課題があります。

二回目の追加接種は任意接種

 日本のポリオワクチンスケジュール間隔が短すぎるために必要となった二回目の追加接種なので、本来なら定期接種とすべきですが、何故か任意接種となりました。日本の不活化ポリオワクチンは比較的高額です(どうして高いかは不活化ポリオワクチンと日本のワクチン審査制度をご覧ください。自治体などの補助もないなか、保護者の負担は大きいです。

「二回目の追加接種」は不活化ポリオワクチンだけ?

 時々百日咳の流行が話題になります。現在の無細胞型百日咳ワクチン成分では長期の免疫維持が困難なため、やはり4-6歳程度で百日咳ワクチンを接種した方が望ましいです。現在日本では三種混合ワクチン(DTP)が無いため、4種混合ワクチン(IPV-DTP)になります。

 海外には成人用の三種混合ワクチン(Tdap)というのがあります。昔の三種混合ワクチンを成人に接種すると腫れやすいため、成分を減らしたものです(最近のDTPでは腫れにくいそうですが)。そろそろ成人四種混合ワクチン(IPV-Tdap)を開発して定期接種してもいいのでは、と思います。

参考サイト

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