げっぷが出にくく、おならが多い赤ちゃんへ―胃軸捻転とタミータイム
げっぷが出にくく、おならが多い赤ちゃんへ―胃軸捻転とタミータイム
赤ちゃんのげっぷが出にくく、お腹が張り、おならが多いときは、乳児期の胃軸捻転が関係していることがあります。家庭でできるタミータイムや授乳の工夫、受診が必要な症状を小児科医が解説します。
「げっぷがなかなか出ません」
「お腹がパンパンに張っています」
「一日中おならをしています」
このような相談を、乳児健診や外来で受けることがあります。赤ちゃんが仰向けになると泣き、抱き上げると落ち着くこともあります。
こうした症状には、赤ちゃんの胃軸捻転(いじくねんてん)が関係していることがあります。
乳児期にみられる慢性的な胃軸捻転は、胃の固定が進むにつれて自然に改善することが多い状態です。ただし、急に強い症状が現れる胃軸捻転や、別の消化管の病気は緊急の対応が必要です。この記事では、家庭でできることと受診の目安を分けて説明します。

胃軸捻転とは
胃軸捻転とは、胃が通常よりも動きやすくなり、ねじれたような位置になる状態です。
生まれて間もない赤ちゃんは、胃を周囲に固定する組織がまだ未熟です。また、授乳中に空気を飲み込みやすい一方で、げっぷを出すのはあまり上手ではありません。
げっぷとして出なかった空気は腸へ流れます。すると腸にガスがたまり、お腹が張って、おならが増えます。ガスで膨らんだ腸が胃を押し上げると、胃の位置がさらに不安定になり、ますますげっぷが出にくくなることがあります。
つまり、乳児期の慢性的な胃軸捻転では、単に「胃がねじれている」だけでなく、
空気を飲み込む → げっぷが出ない → 腸にガスがたまる → お腹が張る → 胃が押し上げられる
という悪循環が関係しています。
胃軸捻転でみられる症状
乳児期の胃軸捻転では、次のような症状がみられます。
げっぷが出にくい
お腹がパンパンに張る
おならが頻繁に出る
ミルクや母乳を吐き戻す
仰向けにすると不機嫌になる
抱き上げると落ち着く
苦しそうに身体をよじる
嘔吐がみられない赤ちゃんもいます。
ただし、げっぷが出ない、おならが多いという症状だけで胃軸捻転と診断することはできません。 哺乳量や便の状態、体重増加、症状の経過などを合わせて判断します。
また、「おならが出ているから腸の病気ではない」とも言い切れません。お腹の張りや嘔吐が強い場合は、小児科でほかの病気を除外する必要があります。
家庭で試せるタミータイム
げっぷを促す方法の一つが、赤ちゃんを短時間うつぶせ姿勢にするタミータイムです。
うつぶせになると胃と食道の位置関係が変わり、胃にたまった空気がげっぷとして出やすくなることがあります。赤ちゃんの背中をやさしくさすったり、軽くトントンしたりしてみましょう。
ここでいうタミータイムは、発達を促す遊びというより、姿勢を利用してげっぷを促すための工夫です。胃軸捻転の体位療法として紹介されていますが、どの赤ちゃんにも必ず効くわけではありません。
タミータイムの注意点
赤ちゃんが起きているときだけ行う
保護者がすぐそばで、顔色と呼吸を見守る
顔や口が寝具に埋まらないようにする
背中を強くたたかない
苦しそうなときや、嘔吐を繰り返すときは中止する
眠ってしまったら、仰向けの寝床へ戻す
うつぶせのまま赤ちゃんから離れない
タミータイムとうつぶせ寝は別です。 1歳未満の赤ちゃんを寝かせるときは、医学的な理由で医師から別の指示を受けている場合を除き、仰向けが原則です。
吐き戻しが多い赤ちゃんでは、授乳直後のうつぶせ姿勢によってかえって吐くことがあります。行うタイミングや姿勢に迷う場合は、診察時に相談してください。
授乳方法も少し工夫しましょう
タミータイム以外にも、次のような方法が役立つことがあります。
授乳の途中で一度休憩し、げっぷを試す
飲み終わった後もしばらく抱いて、げっぷを促す
一度にたくさん飲ませず、必要に応じて少量ずつに分ける
無理に飲ませない
哺乳量、尿の回数、体重の増え方を確認する
一回量を減らした結果、一日の総哺乳量まで不足しては困ります。体重増加が十分でない場合は、自己判断で授乳量を減らさず、小児科へ相談してください。
多くは成長とともに改善します
乳児期の慢性的な胃軸捻転は、胃を支える組織が発達し、赤ちゃん自身もげっぷを出すのが上手になるにつれて、自然に改善することが多い状態です。
多くは生後2~3か月頃から症状が軽くなりますが、改善する時期には個人差があります。
次のような状態は、経過をみるうえで比較的安心できる材料です。
母乳やミルクを飲めている
尿が十分に出ている
体重が順調に増えている
お腹の張りや吐き戻しが徐々に軽くなっている
特に、体重が順調に増えているかは大切です。ただし、体重が増えていればすべて問題ないというわけではありません。
急性型の胃軸捻転は別です
この記事で主に説明しているのは、乳児期の外来でみられる慢性的なタイプです。
一方、胃が急激に強くねじれる急性型胃軸捻転は、まれですが緊急の処置や手術が必要になることがあります。日本小児外科学会の診療ガイドラインでも、急性型と慢性型は分けて診断・治療が検討されています。
すぐに受診してほしい症状
次の症状がある場合は、家庭でタミータイムを試して様子を見る段階ではありません。
緑色のものを吐いた
お腹が急に大きく張った
嘔吐を何度も繰り返す
母乳やミルクを飲めない
吐いたものに血が混じる
顔色が悪い、ぐったりしている
激しく泣き続ける、強く痛がる
呼吸が苦しそう
便やおならが出なくなった
特に、緑色の嘔吐、急激な腹部膨満、哺乳不良、ぐったりしているという症状があれば、診療時間を待たずに救急受診を考えてください。
緊急ではなくても、小児科へ相談したい場合
次のような場合は、一度診察を受けることをおすすめします。
体重が増えない
吐き戻しが徐々に増えている
お腹の張りが強い状態が続く
毎回の授乳がとてもつらそう
生後数か月を過ぎても症状が改善しない
抱き続けなければならず、家族が疲れている
胃軸捻転なのか、ほかの病気なのか分からない
必要に応じて、肥厚性幽門狭窄症、胃食道逆流、腸回転異常、ヒルシュスプルング病などを検討します。
よくある質問
げっぷが出ないと胃軸捻転ですか?
げっぷが出にくいだけでは診断できません。お腹の張り、頻回のおなら、吐き戻し、哺乳量、体重増加などを合わせて判断します。
おならが多ければ心配ありませんか?
げっぷとして出なかった空気がおならになることはあります。ただし、おならが出ているだけで病気を否定することはできません。お腹の張りや嘔吐が強い場合は受診してください。
タミータイムをしたまま寝かせてもよいですか?
いけません。タミータイムは、赤ちゃんが起きていて、保護者が見守っているときだけです。眠ったら仰向けに戻してください。
胃軸捻転はいつ治りますか?
乳児期の慢性的なタイプは、生後2~3か月頃から改善することが多いとされています。ただし個人差があり、体重が増えない場合や症状が続く場合は診察が必要です。
まとめ
げっぷが出にくく、お腹が張って、おならが多い赤ちゃんでは、乳児期の胃軸捻転が関係していることがあります。
多くは成長とともに改善します。赤ちゃんが起きている間に、保護者が見守りながら短時間のタミータイムを行うと、げっぷが出やすくなることがあります。ただし、うつぶせのまま眠らせてはいけません。
体重が順調に増えていれば慌てる必要がない場合が多い一方、緑色の嘔吐、繰り返す嘔吐、急激なお腹の張り、哺乳不良、ぐったりなどがあれば、早めに受診してください。
「胃軸捻転かもしれない」「げっぷが出ず、授乳のたびに苦しそう」と心配なときは、ご相談ください。
参考資料
この記事を書いた医師
宮原 篤
かるがもクリニック院長/小児科医
2011年から世田谷区・千歳船橋で小児科診療を行っています。一般小児科のほか、予防接種、乳幼児健診、アレルギー、子どもの発達など、日常のさまざまな相談に対応しています。
学会・医会では、予防接種や公衆衛生に関する活動に携わり、保護者向け・医療者向けの書籍や記事も執筆しています。診療で実際によく受ける質問をもとに、保護者の方が判断しやすい、正確で実用的な医療情報を発信しています。
主な所属・役職
VPDの会 理事
東京都医師会予防接種・感染症委員会 副委員長
日本小児科医会 公衆衛生委員会
東京小児科医会 公衆衛生部
主な執筆・専門分野
小児科一般/予防接種/乳幼児健診/アレルギー/子どもの発達

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