子どものインフルエンザ治療薬|年齢・A型・B型による選び方
子どものインフルエンザ治療薬|年齢・A型・B型による選び方
「前回はタミフルだったのに、今回は違う薬でした」
「1回で済む薬の方が、よく効くのでしょうか?」
インフルエンザの治療薬には、飲み薬、吸入薬、点滴薬があります。お子さんの年齢、A型・B型の違い、症状、そして確実に飲める・吸えるかを踏まえて選びます。
新しい薬や、1回で治療が済む薬が、すべての子どもに最適とは限りません。日本小児科学会の2026/27年版指針と臨床研究をもとに、選び方を解説します。[1]

年齢・A型・B型で見る治療薬の早見表
以下は、抗インフルエンザ薬を使うと判断した場合の一般的な選択肢です。薬の記載順は、効果の順位ではありません。
年齢 | A型 | B型 |
|---|---|---|
1歳未満 | タミフルを推奨※。ゾフルーザは積極的には推奨されません | タミフルを推奨※。ゾフルーザは積極的には推奨されませんが、状況により検討します |
1~5歳 | タミフルを推奨。ゾフルーザは積極的には推奨されません | タミフルを推奨。ゾフルーザは状況により検討します |
6~11歳 | タミフル。確実に吸入できればリレンザ・イナビルも選択肢。ゾフルーザは慎重に判断します | タミフルに加え、ゾフルーザの使用も提案されています。確実に吸入できればリレンザ・イナビルも選択肢 |
12歳以上 | タミフル・ゾフルーザ・リレンザ・イナビルが選択肢 | 左記4剤が選択肢。指針ではゾフルーザは他剤より優位とされています |
※タミフルは生後2週以降の新生児と乳児に適応があります。生後2週未満や体重2,500g未満では、使用経験などを踏まえた慎重な判断が必要です。
表を読むときの注意点
ゾフルーザは、体重20kg未満では他剤を考慮したうえで、投与の必要性を特に慎重に判断します。
表のイナビルは吸入粉末剤です。ネブライザーで使う吸入懸濁液は別の剤形です。
喘鳴や強い呼吸器症状がある場合、肺炎や入院が必要な状態では、この表だけで薬を選びません。
飲み薬・吸入薬が使いにくい場合には、点滴薬のラピアクタを検討します。[1]
インフルエンザの薬は、必ず必要ですか?
抗インフルエンザ薬は、すべての患者さんに必須ではありません。 多くは自然に軽快する病気でもあるためです。
一方、日本小児科学会は、幼児、重症化リスクの高い基礎疾患がある患者さん、呼吸器症状が強い患者さんには投与を推奨しています。基礎疾患がない場合も、発症からの時間や症状を踏まえて判断します。
治療開始は原則として発症後48時間以内ですが、重症化リスクが高く症状が続いている場合などは、48時間を過ぎても投与を考慮します。「2日たったから、受診しても意味がない」ということではありません。[1]
タミフルとゾフルーザは、どう使い分けますか?
タミフル:乳幼児を含め、幅広い年齢で推奨される薬
タミフルは、通常1日2回、5日間服用する薬です。乳幼児向けの剤形があり、幅広い年齢で推奨されています。
入院が必要な子どもや重症例でも、重要な選択肢です。経口投与が難しい場合には、ラピアクタの点滴を検討します。[1]
ゾフルーザ:年齢とA型・B型を分けて考える薬
ゾフルーザは、通常1回の服用で治療する薬です。ただし、小児では年齢とウイルスの型によって推奨が異なります。
12歳以上:A型・B型ともに推奨されています(Bでは他剤より優位)。
6~11歳:B型への使用が提案されています。A型では慎重に判断します。
5歳以下:積極的には推奨されませんが、B型では状況により検討します。
低年齢の子どもでは、治療中に薬が効きにくくなったウイルスが出現し、排泄が長引く可能性があることが、慎重に判断する理由の一つです。
顆粒製剤の登場で小さい子どもにも投与しやすくなりましたが、「飲める剤形があること」と「積極的に使うことが勧められること」は別です。[1]
イナビルは「1回で済むから一番よい薬」ですか?
1回で治療を完了できることは利点ですが、それだけで効果が優れているとはいえません。
イナビルの吸入粉末剤には、継続して薬を使う負担を減らせる便利さがあります。一方、治療効果を調べた研究には、解釈に注意が必要な点があります。
国内の比較試験には、比較相手の耐性という問題がありました
国内を中心に行われた成人の試験では、イナビルはタミフルに対して、事前に定めた範囲を超えて劣らないという「非劣性」が示されました。
ただし、その試験にはタミフルが効きにくいウイルスに感染した患者さんが多く含まれていました。比較相手が十分に効かない条件では、「その薬に劣らなかった」という結果だけで、治療効果を十分に評価することはできません。[2,3]
海外の試験では、症状改善の差を示せませんでした
海外で行われた成人のIGLOO試験では、ラニナミビルの吸入粉末剤とプラセボを比較しています。
症状が軽快するまでの中央値は、40mg投与群で約102時間、プラセボ群で約104時間で、有意差はありませんでした。ウイルスに対する作用は確認されても、主要な評価項目である症状改善の早さには、明確な差を示せなかったという結果です。[4]
この結果だけで「イナビルはどんな場合にも効かない」とは断定できません。ただ、「他の薬と同じ効果で、1回で済むから優れている」と単純に説明することもできません。
ネブライザー用のイナビルは、別に評価します
イナビルには、粉末剤とは別に、ネブライザーを使う吸入懸濁液があります。
2024年に公表された10歳以上を対象とする試験では、吸入懸濁液160mgで、プラセボより罹病期間の中央値が約18時間短くなりました。[5]
ただし、剤形・用量・投与方法が異なります。この結果を、そのまま通常の吸入粉末剤や10歳未満の子どもに当てはめることはできません。
リレンザとイナビルの違いは?
比較する点 | リレンザ | イナビル吸入粉末剤 |
|---|---|---|
治療の回数 | 1日2回、5日間 | 単回投与 |
使うときのポイント | 家庭で正しい吸入を続ける | 投与時に必要な量を十分に吸入する |
治療効果 | イナビルより常に優れるとまではいえません | リレンザより優れるとはいえず、効果の根拠に限界があります |
小児の直接比較試験では、解熱までの時間に大きな差がなかった報告があります。一方、観察研究では、イナビルで一度下がった熱が再び上がる「二峰性発熱」が多かったという結果もあります。[6,7]
研究の結果は完全には一致していません。吸入を続けられるか、確実に吸えるか、呼吸器の状態はどうかを含めて選ぶことが大切です。
なお、単回投与は「ひと吸いだけ」という意味ではありません。処方された量を吸入するために、必要な操作を最後まで行います。
イナビルを処方されたことが、処方の誤りを意味するわけではありません。うまく吸えたか分からない場合は、自己判断で追加せず、処方した医療機関や薬局に相談してください。
薬を使っていても、見守りは必要です
インフルエンザでは、薬を使ったことだけで、その後の経過を安心と判断することはできません。
また、急に走り出すなどの異常行動は、抗インフルエンザ薬の種類や、薬を使ったかどうかにかかわらず報告されています。
少なくとも発熱から2日間は、窓や玄関の施錠など、転落や外への飛び出しを防ぐ対策をとってください。[1]
かるがもクリニックでは、お子さんの年齢、症状、基礎疾患、飲み薬・吸入薬を使えるかを確認しながら、治療を相談していきます。薬の飲ませ方や吸入に不安がある場合も、診察時にお伝えください。
よくある質問
A型とB型で、薬が違うことはありますか?
あります。特にゾフルーザは、年齢とA型・B型によって指針の推奨が異なります。同じお子さんでも、感染した型やそのときの状態によって薬が変わることがあります。
1回で済む薬の方が強いのですか?
投与回数の少なさと、治療効果の強さは別です。薬が体内で作用する時間や投与方法が異なるため、回数だけでは比較できません。
吸入薬がうまく使えそうにありません
診察時にお知らせください。年齢だけで吸入できるとは判断せず、内服薬なども含めて検討します。すでに吸入してうまくできなかった場合も、医療機関や薬局に相談してください。
発症から48時間を過ぎたら、治療できませんか?
一律に治療できなくなるわけではありません。重症化リスクや症状の経過を踏まえて判断します。48時間を過ぎたことを理由に、必要な受診を控えないでください。
参考資料・文献
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会.2026/27シーズンのインフルエンザ治療・予防指針.2026年10月26日.
畠山修司.
国内外で抗インフルエンザ薬のラニナミビルへの評価が違うのはなぜか? 日本医事新報社.
Watanabe A, et al.
Long-acting neuraminidase inhibitor laninamivir octanoate versus oseltamivir for treatment of influenza: a double-blind, randomized, noninferiority clinical trial. Clin Infect Dis. 2010;51:1167–1175.
Biota Pharmaceuticals.
Top-line data from the phase 2 IGLOO trial of laninamivir octanoate. 2014.企業公表資料。試験登録:NCT01793883.
Watanabe A, et al.
Efficacy and safety of laninamivir octanoate nebulizer inhalation versus placebo: a randomized, single-blind, placebo-controlled, parallel-group, multicenter phase 3 study. Jpn J Antibiot. 2024;77:107–120.
Katsumi Y, et al.
Effect of a single inhalation of laninamivir octanoate in children with influenza. Pediatrics. 2012;129–e1436.
Koseki N, et al.
Comparison of the clinical effectiveness of zanamivir and laninamivir octanoate for children with influenza A(H3N2) and B in the 2011–2012 season. Influenza Other Respir Viruses. 2014;8:151–158.
執筆:宮原 篤
かるがもクリニック院長・小児科医。世田谷区・千歳船橋で、子どもの外来診療と予防接種に取り組んでいます。
更新日:2026年11月6日
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個々のお子さんの治療薬は、診察所見、体重、基礎疾患などを踏まえて判断します
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