フルミストとは?効果・副反応・接種後の登園やインフルエンザ検査を小児科医が解説
フルミストとは?効果・副反応・接種後の登園やインフルエンザ検査を小児科医が解説

フルミストは、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。注射針を使わず、日本では2歳以上19歳未満が対象です。年齢や過去の接種歴にかかわらず、1シーズン1回の接種で完了します。
保護者や保育園・幼稚園から、特によく聞かれるのが次の疑問です。
接種した子から周囲へワクチンウイルスがうつるのではないか
接種後は登園・登校を控えるべきではないか
接種後に発熱してインフルエンザ検査が陽性になったら、どう考えるのか
先に結論を示します。
フルミスト接種後に鼻からワクチン株が検出されることはありますが、他人への水平伝播は極めてまれです。体調がよければ、接種したことだけを理由に登園・登校を控える必要はありません。一方、接種後、とくに1週間程度は、実際のインフルエンザ感染がなくても鼻の検体からワクチン株が検出され、迅速抗原検査が陽性になる可能性があります。
ただし、防護環境を必要とするような重度の免疫不全者と密接に接触する場合は例外です。接種前に必ず医師へ相談してください。
フルミストは鼻に噴霧する生ワクチンです
フルミストは、弱毒化したインフルエンザウイルスを左右の鼻に噴霧する経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。ワクチン株が鼻咽頭で限定的に増殖し、鼻の粘膜を含む免疫反応を誘導します。
国内での接種方法は、左右の鼻に0.1mLずつ、合計0.2mLを1回噴霧します。注射針を使わないため、注射への恐怖が強いお子さんにとっては大きな利点です。
また、国内では1シーズン1回で完了します。13歳未満では注射のインフルエンザワクチンは通常2回接種となるため、通院回数を減らせる点も実用的なメリットです。
フルミストにはどの程度の効果がありますか?
フルミストには、インフルエンザの発症を減らす効果があります。ただし、接種すれば絶対に感染しないワクチンではありません。
国内承認時の臨床試験では、2歳以上19歳未満の健康な小児を対象に、フルミスト595人とプラセボ290人を比較しました。インフルエンザを発症した割合は、フルミスト群25.5%、プラセボ群35.9%で、フルミストによる相対的な発症減少率は28.8%でした。
この「28.8%」は、「接種した子のうち28.8%だけに効く」という意味ではありません。接種しなかった場合と比べて、発症する割合が相対的に28.8%少なかったという意味です。
一方、ワクチンの効果は、流行株との一致やシーズンによって変動します。日本小児科学会は、2歳以上19歳未満では、フルミストと注射の不活化ワクチンのどちらか一方が常に優れているとはしておらず、どちらも選択肢として推奨しています。
シェディングと水平伝播は同じではありません
この二つは、明確に分けて考える必要があります。
シェディング:接種後、鼻咽頭からワクチン株が検出されること
水平伝播:接種した人のワクチン株が、別の人に感染すること
フルミストは鼻の粘膜でワクチン株が限定的に増殖するため、接種後に鼻からワクチン株が検出されること自体は珍しくありません。しかし、「鼻から検出された」ことと「周囲の人に感染させた」ことは同じではありません。
保育施設で行われた研究では、接種児の80%から少なくとも1株のワクチンウイルスが検出されました。一方、確認された水平伝播は1例で、接種児1人との濃厚接触によってワクチン株を獲得する確率は0.58%と推定されました。伝播が確認された子の症状も軽いものでした。
つまり、シェディングは起こり得ますが、水平伝播は極めてまれです。通常の家庭生活や集団生活で過度に心配する必要はありません。
フルミスト接種後に登園・登校を控える必要はありません
体調がよければ、フルミストを接種したことだけを理由に、保育園・幼稚園・学校を休む必要はありません。
一部の園で「生ワクチンなので、接種後は数日間登園しないでください」と案内されることがあるようです。しかし、シェディングがあることだけを根拠に、元気な接種児を一律に登園停止とする医学的根拠はありません。英国では経鼻生ワクチンを学校で広く接種しており、公衆衛生当局も接種した児童を学校から除外する必要はないと説明しています。
もちろん、接種後に発熱や強い体調不良があれば、接種の種類とは関係なく、症状を基準に休ませてください。
例外は、造血幹細胞移植直後など、防護環境を必要とする重度の免疫不全者と密接に接触する場合です。国内添付文書では、接種後1~2週間はそのような方との密接な接触を可能な限り避けるよう注意されています。ただし、「同じ園に基礎疾患のある子がいる」というだけで、接種児全員の登園を制限する話ではありません。
接種後の発熱とインフルエンザ検査には注意が必要です
フルミスト接種後には、鼻水、鼻づまり、咳、のどの痛み、頭痛、発熱などがみられることがあります。もっとも多いのは鼻水・鼻づまりです。
もう一つ重要なのが、接種後のインフルエンザ検査です。
フルミスト接種後、とくに1週間程度は、鼻腔・鼻咽頭の検体を使った迅速抗原検査で陽性になることがあります。これは検査がでたらめな「偽陽性」を出しているのではなく、鼻に存在するフルミスト由来のワクチン株を検出している可能性があります。通常の迅速検査だけでは、ワクチン株と自然感染したインフルエンザウイルスを区別できません。まれには、ワクチン株がそれより長く検出されることもあります。
接種後に発熱して受診する場合は、フルミストを接種した日を必ず医師へ伝えてください。
一方で、「接種後だから検査陽性はすべてワクチン株だろう」と決めつけるのも危険です。本当のインフルエンザに感染している可能性は残ります。地域の流行状況、周囲との接触歴、発症までの日数、症状を合わせて判断する必要があります。
フルミストは本格的な流行前に早めの接種がおすすめです
フルミストは、地域でインフルエンザが本格的に流行する前に接種しておくことをおすすめします。
理由は二つあります。
接種直後から十分な予防効果が得られるわけではなく、免疫が誘導されるまで時間が必要だから
接種後しばらくして発熱した場合、流行期には「ワクチン株の検出」なのか「本当のインフルエンザ感染」なのか、検査結果の解釈が難しくなるから
ただし、流行が始まった後は接種しても意味がない、ということではありません。接種時期に迷った場合はご相談ください。
接種前に同じような株へ感染していた場合
フルミストは、生ワクチンの株が鼻粘膜で一定程度増殖することで免疫を誘導します。そのため、接種前に同じ、または近い株のインフルエンザに感染し、鼻の粘膜に免疫ができている場合、ワクチン株の増殖が早く抑えられ、ワクチンによる上乗せの免疫反応が小さくなる可能性があります。
ただし、これは「すでに感染していたらフルミストは効かない」という意味ではありません。自然感染で得られた免疫そのものも防御に働くため、総合的な予防効果が必ず低くなるとは断定できません。
フルミスト接種後も感染を繰り返す場合は注射も検討します
どのインフルエンザワクチンも、感染を完全に防ぐものではありません。1回感染しただけで「フルミストが効かなかった」と判断する必要はありません。
一方、フルミストを接種しても複数シーズンにわたりインフルエンザ感染を繰り返す場合は、翌シーズンに注射の不活化ワクチンへ変更することも選択肢です。フルミストと注射では免疫を誘導する方法が異なるため、接種方法を変えてみることには合理性があります。これは一律のガイドラインではなく、当院の臨床的な提案です。
当院では、過去の接種歴、感染歴、喘息・喘鳴の有無、生活環境などを確認し、どちらがそのお子さんに合っているかを一緒に検討します。
フルミストが向いている子、注射を考えたい子
フルミストが選択肢になりやすい | 注射を優先して考えたい |
|---|---|
2歳以上19歳未満 | 2歳未満、19歳以上 |
注射への恐怖が強い | 妊娠中 |
1回で接種を終えたい | 免疫不全、免疫抑制治療中 |
喘息や現在の喘鳴がない | 喘息がある、現在喘鳴がある |
接種後、重度免疫不全者との密接な接触がない | 重度免疫不全者と密接に接触する |
サリチル酸系薬を使用中 | |
フルミスト接種後も感染を繰り返している |
実際に接種できるかどうかは、当日の体調や既往歴も含めて診察で判断します。
当院では国内承認・販売開始前から接種してきました
当院では、フルミストが国内で承認・販売される以前から、個人輸入による接種を行ってきました。そのため、国内導入後に初めて扱い始めたわけではなく、長年にわたり多くの接種経験を積んでいます。
鼻への噴霧を嫌がるお子さんへの対応、接種後の鼻症状や発熱、検査結果に関する相談にも対応してきました。
フルミストは便利なワクチンですが、すべての子に一律に勧めるものではありません。注射のワクチンも含めて、その子に合った方法を選ぶことが大切です。
【フルミストの予約はこちら】
https://karugamo.mdja.jp/
よくある質問
フルミストは何歳から接種できますか?
日本では2歳以上19歳未満が対象です。2歳未満と19歳以上には、注射の不活化インフルエンザワクチンを検討します。
フルミストは何回接種しますか?
国内では、年齢や過去の接種歴にかかわらず1シーズン1回です。左右の鼻に1噴霧ずつ行います。
フルミスト接種後、そのまま保育園や学校へ行けますか?
体調がよければ、接種したことだけを理由に登園・登校を控える必要はありません。発熱や強い体調不良がある場合は、症状を基準に休んでください。
接種した子から家族や園児へうつりますか?
ワクチン株が鼻から検出されるシェディングは起こり得ますが、他人への水平伝播は極めてまれです。ただし、防護環境を必要とする重度免疫不全者との密接な接触は、接種後1~2週間できるだけ避けます。
接種後にインフルエンザ検査が陽性になることはありますか?
あります。接種後、とくに1週間程度は、迅速抗原検査がフルミスト由来のワクチン株を検出する可能性があります。受診時には接種日を必ず伝えてください。
検査陽性がワクチン株か、本当の感染か区別できますか?
通常の迅速抗原検査だけでは区別できません。流行状況、接触歴、発症時期、症状を総合して判断します。接種後だからといって、本当のインフルエンザ感染を否定することはできません。
注射のワクチンよりよく効きますか?
どちらかが常に優れているという明確な証拠はありません。日本小児科学会は、2歳以上19歳未満では両方を選択肢として推奨しています。年齢、喘息歴、注射への恐怖、過去の感染状況などから選びます。
フルミスト接種後もインフルエンザにかかったら、次もフルミストでよいですか?
1回の感染だけで変更する必要はありません。ただし、接種後も複数シーズンにわたり感染を繰り返す場合は、翌シーズンに注射の不活化ワクチンへ変更することも検討します。
まとめ
フルミストは鼻に噴霧するインフルエンザ生ワクチンです
日本では2歳以上19歳未満が対象で、1シーズン1回です
国内試験ではインフルエンザの発症を相対的に28.8%減らしました
シェディングは起こり得ますが、水平伝播は極めてまれです
体調がよければ、接種を理由に登園・登校を控える必要はありません
接種後、とくに1週間程度は、ワクチン株によって抗原検査が陽性になる可能性があります
接種後も複数シーズンにわたり感染を繰り返す場合は、注射への変更も検討します
フルミストと注射には、それぞれ利点と注意点があります。迷う場合は、お子さんの年齢、体質、これまでの接種歴や感染歴を確認したうえで相談してください。
参考資料
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