赤ちゃんのFPIESとは?食後の嘔吐・受診の目安・いつ治るかを小児科医が解説
赤ちゃんのFPIESとは?食後の嘔吐・受診の目安・いつ治るかを小児科医が解説
「卵黄を食べて、しばらくしてから何度も吐いた」
「じんましんは出ていないのに、顔色が悪くなってぐったりした」
「以前は食べられていたのに、急に吐くようになった」
このような場合、FPIES(食物蛋白誘発性腸炎症候群)という、食物アレルギーの可能性があります。
FPIESは、食べてすぐにじんましんなどが出る一般的な即時型アレルギーとは、症状の現れ方や検査、対応が異なります。
ただし、FPIESを心配するあまり、離乳食全体を止めたり、問題なく食べられている食品まで避けたりする必要はありません。大切なのは、原因食品には適切に対応しながら、食べられるものを大切にすることです。
かるがもクリニックには、PAE(小児アレルギーエデュケーター)が在籍しています。食事の進め方やご家庭での不安も、医師とPAEに遠慮なくご相談ください。

FPIESとは?食べて数時間後に症状が出る食物アレルギーです
FPIESは、食べ物に含まれるたんぱく質をきっかけに、主に消化器症状が起こる食物アレルギーです。消化管アレルギーの一つで、乳幼児に多くみられます。
ここでは、原因食品を食べた後に症状が出る「急性FPIES」を中心に説明します。
典型的には、食後1~4時間ほどしてから、繰り返す嘔吐が起こります。顔色が悪くなったり、ぐったりしたりすることがあり、下痢が遅れて出る場合もあります。重い場合には、脱水や血圧低下への治療が必要です。[1,2]
「食べた直後は元気だった」ということもあるため、食事との関係に気づきにくいのが特徴です。
日本では卵黄が原因となるFPIESが注目されていますが、牛乳、大豆、米、小麦、魚など、さまざまな食品が原因になり得ます。原因になり得る食品の一覧を見て、すべてを避ける必要はありません。
一般的な即時型アレルギーとは何が違いますか?
一般的な即時型食物アレルギーは、主にIgEという抗体が関係します。一方、FPIESは通常、IgEを介さない仕組みで起こります。
比較する点 | 一般的な即時型食物アレルギー | 急性FPIES |
|---|---|---|
症状が出るまで | 多くは食後数分~2時間程度 | 典型的には食後1~4時間 |
主な症状 | じんましん、腫れ、咳、ゼーゼー、嘔吐など | 繰り返す嘔吐、顔色不良、ぐったり、下痢など |
皮膚・呼吸器症状 | 起こることがあります | 典型例では伴いません |
特異的IgE検査 | 診断の参考になります | 陰性でもFPIESを否定できません |
重い反応への対応 | アナフィラキシーではアドレナリンが重要です | 脱水や循環不全への対応、輸液などが重要です |
「じんましんがない」「アレルギーの血液検査が陰性」という理由だけで、FPIESを否定することはできません。
ただし、FPIESと即時型アレルギーを併せ持つ場合もあります。呼吸が苦しい、唇や舌が腫れるなどの症状があれば、FPIESだけと考えず、緊急に対応する必要があります。[1,2]
受診の目安は?ぐったりしているときは様子を見ないでください
食後に吐いたからといって、すべてがFPIESではありません。胃腸炎など、ほかの病気のこともあります。まずは、原因の判断よりも、お子さんの状態を優先してください。
お子さんの状態 | 対応の目安 |
|---|---|
ぐったりして反応が乏しい、意識がおかしい、著しく顔色が悪い、呼吸が苦しい | 119番など、直ちに救急対応を求めてください |
繰り返し吐く、水分を飲んでも吐く、元気がない | 速やかに医療機関を受診してください |
回復したものの、特定の食品の後に同じような嘔吐を繰り返す | その食品を再び食べさせる前に、小児科に相談してください |
ぐったりしている子に、無理に飲み物や食べ物を与えないでください。緑色のものを吐く、強い腹痛がある場合も、別の緊急疾患の可能性があるため、速やかな受診が必要です。
すでにFPIESと診断されている場合は、担当医と決めた緊急時の対応に従ってください。
受診時には、次の情報が役立ちます。
食べた食品、量、調理方法
食べた時刻と、吐き始めた時刻
嘔吐や下痢の様子、顔色、元気の変化
同じ食品を以前に食べたときの様子
ただし、記録をそろえるために受診を遅らせる必要はありません。
血液検査で診断できますか?
通常の血液検査だけで、FPIESを確実に診断したり、否定したりすることはできません。
診断では、「何を食べて、何時間後に、どのような症状が出たか」という経過が重要です。胃腸炎など、ほかの原因も検討します。
必要に応じて、医療機関で原因と考えられる食品を食べ、症状を確認する食物経口負荷試験(OFC)を行います。これは、診断や、食べられるようになったかを確認するための検査です。[1,2]
「ほんの少しなら大丈夫」と自宅で試さないでください
2026年に発表された、卵黄または牛乳によるFPIESの乳児54人を対象とした研究では、ごく少量の負荷でも反応する子がいました。少量での症状は診断時の負荷より軽い傾向でしたが、治療を必要とする反応もありました。[3]
これは、「少量でも必ず重症になる」という意味ではありません。しかし、「耳かき程度なら安全」とは判断できないため、FPIESが疑われる食品を、確認のために自宅で食べ直すことは避けてください。
FPIESはいつ治りますか?
成長とともに、原因食品を食べても症状が出なくなる子が多くいます。この状態を「耐性を獲得する」といいます。
ただし、治る時期は原因食品やお子さんによって異なります。
スウェーデンの113人を追跡した研究では、多くの子が4歳未満で耐性を獲得していました。一方、魚が原因の場合は、牛乳やオーツ麦よりも食べられるようになる時期が遅い傾向でした。[4]
日本の卵黄FPIESでも、1~2歳台に食べられるようになった報告がありますが、それ以降も反応が続く子もいます。「2歳になれば必ず治る」「○年待てば大丈夫」とは言い切れません。[5]
また、「食べていないので症状が出ない」ことと、「食べても症状が出なくなった」ことは違います。治ったかどうかは、経過を見ながら、必要に応じて医療機関で負荷試験を行って確認します。
症状がなくても、再診には意味があります
原因食品を避けて落ち着いていても、除去を続けたままにせず、担当医と再評価の時期を相談しましょう。
再診では、原因食品への反応だけでなく、体重や身長の増え方、食べられる食品の種類、ご家族の負担も確認します。負荷試験の時期は、年齢、原因食品、前回の症状などを踏まえて個別に決めます。
負荷試験が陰性なら、すぐに何でも食べてよいですか?
負荷試験で症状が出なかったことは、食事を広げるための大切な一歩です。その後は、担当医と確認した量・調理方法・頻度で、家庭での摂取を進めます。
卵黄FPIESの3人を調べた報告では、早い時期に行った負荷試験が陰性でも、その後の家庭での摂取中に下痢や嘔吐が出た例がありました。研究者は、食べられるようになる途中の「移行期」がある可能性を示しています。[5]
ただし、少人数の報告です。すべての子が同じ経過をたどるわけでも、陰性結果を過度に心配する必要があるわけでもありません。
大切なのは、検査後の食べ方と、症状が出たときの連絡先を確認しておくことです。家庭で嘔吐や下痢が出たら、無理に食べ続けず、担当医に相談してください。
卵黄をしばらく休んだことが、発症の原因なのでしょうか?
「忙しくて卵黄をあげられなかった」
「風邪をひいたので離乳食を休んだ」
「間隔を空けた自分が悪かったのでは」
このように考えてしまう保護者の方もいるかもしれません。
2025年の研究では、卵黄FPIESを発症した24人について、症状なく食べていた時期の摂取間隔よりも、発症直前の間隔が長かったことが報告されました。[6]
しかし、この研究は発症した子の記録を振り返ったものです。中断が発症の原因だったことや、毎日食べれば予防できることを証明した研究ではありません。
現時点で、FPIESを予防するための「何日おきに食べるべき」という確立したルールはありません。保護者の与え方が悪かったと考える必要はありませんし、症状が出た後に、中断を恐れて無理に食べ続ける必要もありません。
食べられている食品まで、避けなくて大丈夫です
FPIESを経験すると、次の食事が怖くなるのは自然なことです。
ただ、原因ではない食品まで広く除去すると、食事の選択肢が減り、栄養や食べる経験、ご家族の負担に影響することがあります。
問題なく食べられている食品は、大切に続けていきましょう。新しい食品の進め方は、これまでの症状や原因食品の数に応じて相談できます。
FPIESへの不安だけを理由に、症状のない赤ちゃんの離乳食を一律に遅らせることも勧められません。ピーナッツの早期導入を調べた研究でも、FPIESへの注意は必要ですが、それだけを理由に導入を避けるべきではないとしています。[7]
なお、原因食品を少量ずつ食べ続けて慣らすことは、家庭の判断で行わないでください。「食べられるものを続けること」と「症状が出る食品を食べ続けること」は別です。
よくある質問
以前は食べられていたのに、FPIESになることはありますか?
あります。何度か問題なく食べた後に、症状が出る場合があります。「前に食べられたから、今回も食物アレルギーではない」とは判断できません。[6,7]
卵黄が原因なら、卵白も避ける必要がありますか?
卵黄FPIESだからといって、卵白にも必ず反応するわけではありません。ただし、即時型の卵アレルギーを併せ持つ場合や、卵白を取り分けた際に卵黄が混ざる可能性もあります。卵白を食べてよいかは、これまでの摂取状況も含めて担当医と相談してください。
固ゆで卵黄が食べられれば、半熟卵も大丈夫ですか?
固ゆで卵黄を食べられたことだけで、半熟やほかの調理方法も安全とは判断できません。FPIESでは、加熱の程度による違いについて十分に分かっていない点があります。量や調理方法を変える際は、担当医に確認しましょう。[1,2]
食べさせるのが怖くて、離乳食が進みません
その不安も、診療で相談してよいことです。原因食品への対応を整理し、食べられているものを確認しながら、無理のない進め方を一緒に考えます。食事の種類や量が減っている、体重が増えない場合は、早めにご相談ください。
当院にはPAEがいます。食事の不安も安心してご相談ください
かるがもクリニックには、PAE(小児アレルギーエデュケーター)が在籍しています。
PAEは、小児のアレルギーについて専門的な知識と指導技術を持つ、日本小児臨床アレルギー学会認定の医療スタッフです。医師と連携し、ご家庭で治療や生活管理を続けられるよう支援します。[8]
「次に何を食べさせればよいか分からない」
「病院では説明を理解できたけれど、家に帰ると不安になる」
「家族や保育園に、どのように説明すればよいのか」
「また吐くのではないかと、食事のたびに緊張してしまう」
こうしたことも、遠慮なくお話しください。
当院では、医師とPAEが一緒に、食事と症状の経過、ご家庭で困っていることを整理します。必要に応じて専門施設とも連携し、検査や再評価につなげます。
原因食品への注意は必要ですが、食事の時間すべてを怖いものにする必要はありません。食べられるものを大切にしながら、お子さんとご家族に合った進め方を一緒に考えていきましょう。
参考文献・情報源
Nowak-Węgrzyn A, et al. International consensus guidelines for the diagnosis and management of food protein–induced enterocolitis syndrome: Executive summary. J Allergy Clin Immunol. 2017;139:1111–1126.e4.
Nowak-Węgrzyn A, et al. Current status and future directions in food protein-induced enterocolitis syndrome: An NIAID workshop report of the June 22, 2022, virtual meeting. J Allergy Clin Immunol. 2025;155:336–356.
Baba Y, et al. Threshold heterogeneity and dose-related clinical reaction profiles in infantile food protein-induced enterocolitis syndrome. Pediatr Allergy Immunol. 2026;37.
Resolution of Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome—A Long-Term Follow-Up Study of 113 Swedish Children. J Allergy Clin Immunol Pract. 2024.
Kunitsu T, Hamanaka K, Tagaya M, Nonomura K. Potential for gradual tolerance acquisition in egg yolk–induced FPIES: A case series. J Allergy Clin Immunol Glob. 2026;5:100635(2025年オンライン公開).
Okura Y, et al. Symptoms of egg yolk-associated food protein-induced enterocolitis syndrome appear following prolonged cessation. JPGN Reports. 2025;6:387–393.
Verhoeven DHJ, et al. The prevalence of peanut-triggered food protein-induced enterocolitis syndrome in a prospective cohort of infants introducing peanut in the first year of life. Pediatr Allergy Immunol. 2025;36.
日本小児臨床アレルギー学会「PAE(小児アレルギーエデュケーター)とは」
執筆:宮原 篤|かるがもクリニック院長・小児科医
世田谷区・千歳船橋で、乳幼児からのお子さんの診療に携わっています。保護者の方が見通しを持ち、ご家庭での対応を考えられるよう、医学的な根拠を分かりやすくお伝えしています。
※この記事は2026年11月時点の情報に基づく一般的な解説です。原因食品の除去・再開、負荷試験の時期は、お子さんの経過に応じて担当医と相談してください。
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