【改訂版】離乳食は10倍がゆからでいい?911人調査から考える補完食・卵・鉄・BLW
【改訂版】離乳食は10倍がゆからでいい?911人調査から考える補完食・卵・鉄・BLW
「離乳食は10倍がゆから始めるもの」
「白身魚の次は鶏肉で、牛肉や豚肉はもっと後」
「卵白はアレルギーが怖いので、なるべく遅らせたい」
このように教わった保護者は多いと思います。
しかし、2026年に発表された日本の調査では、保護者が一般的な指導に沿って慎重に進めていても、エネルギー、鉄、動物性食品などを十分に補えていない可能性が示されました。
最初に結論をまとめます。
10倍がゆを最初に少量試すこと自体は問題ありません
ただし、薄いおかゆを補完食の中心として長く続けないことが大切です
鉄を含む肉、魚、卵、大豆製品などを意識して取り入れます
食物アレルギーを心配して、卵などの開始を一律に遅らせる必要はありません
BLWは「手づかみ食べだけ」を意味するものではありません
食べる量は赤ちゃんに任せ、完食を求めすぎないことも大切です
手作りにこだわらず、ベビーフードも上手に利用しましょう
離乳食は10倍がゆからでよい?911人の保護者調査をもとに、補完食の考え方、鉄・卵の進め方、BLW、窒息予防、保護者の負担を減らす工夫を小児科医が解説します。

「離乳食」ではなく「補完食」と考えてみましょう
補完食とは、母乳や育児用ミルクだけでは不足してくるエネルギーや栄養素を、食べ物で補うことです。
「離乳食」という言葉には、母乳やミルクから離れていく食事という印象があります。しかし、補完食を始めても母乳や育児用ミルクを急に減らす必要はありません。
WHOは、補完食を「母乳や育児用ミルクだけでは必要な栄養を満たせなくなったときに、乳汁に加えて食べ物を与える過程」と説明しています。一般的には生後6か月頃から始まります。
日本の「授乳・離乳の支援ガイド」では、生後5~6か月頃が開始の目安です。月齢だけでなく、次のような発達も確認します。
首がしっかりすわっている
支えると安定して座れる
食べ物に興味を示す
スプーンを舌で強く押し出す反射が弱くなっている
赤ちゃんの発達には個人差があります。開始日をカレンダーだけで決める必要はありません。
WHO・6~23か月児の補完食ガイドライン
こども家庭庁・授乳・離乳の支援ガイド
911人の調査から分かった、日本の補完食の実態
かるがも藤沢クリニックの江田明日香先生らは、全国34施設を受診した生後5~11か月の乳児の保護者911人を対象に、授乳と補完食について調査しました。
主な結果は次のとおりです。
調査項目 | 結果 |
|---|---|
子どもの栄養情報をインターネットから得ていた | 78.9% |
生後5か月で10倍がゆを食べていた | 90.0% |
生後6か月で卵白を食べていた | 8.5% |
生後9か月で卵白を食べていた | 81.1% |
生後7か月で鶏肉を食べていた | 45.6% |
生後7か月で豚肉を食べていた | 4.1% |
生後7か月で牛肉を食べていた | 3.1% |
献立を考えるのが大変 | 76.2% |
作るのが面倒・苦痛 | 48.3% |
アレルギーが怖い | 40.6% |
窒息が怖い | 39.6% |
この調査で見えてきたのは、保護者が勝手な方法で進めている姿ではありません。
むしろ、教えられた順番を守り、慎重に進めているからこそ、薄いおかゆや限られた食品が長く続いている可能性があります。
ただし、この研究はアンケート調査です。実際の栄養摂取量や血液中の鉄を測定した研究ではないため、「調査対象の赤ちゃんが栄養不足だった」と証明したものではありません。
家庭での進め方が、補完食本来の目的に十分つながっているかを見直すきっかけと考えるのが適切です。
江田明日香ほか「離乳期の乳児の保護者を対象とした授乳と補完食に関するアンケート」
10倍がゆを続けることはお勧めしません
10倍がゆを最初に少量試すこと自体は問題ありません。補完食を始めたばかりの赤ちゃんが、食べ物の味や舌触り、飲み込み方に慣れるためには使いやすい形です。
問題は、水分の多い10倍がゆを、補完食の中心として長く続けることです。
赤ちゃんの胃は小さいため、薄いおかゆをたくさん食べても、十分なエネルギーを摂れないことがあります。
飲み込みに慣れてきたら、赤ちゃんの様子を見ながら、
水分を少しずつ減らす
なめらかな状態から粗つぶしへ進める
5倍がゆや軟飯へ段階的に進める
おかゆだけで終わらず、たんぱく質を含む食品を組み合わせる
ことを意識しましょう。
「何倍がゆを何日食べたら次へ」という一律の正解はありません。赤ちゃんが安全に飲み込めているか、体重が増えているか、食事を楽しめているかを確認しながら進めます。
補完食では鉄を意識してください
乳児期後半は、体内に蓄えていた鉄が減少し、鉄不足を起こしやすくなる時期です。特に母乳栄養では、補完食から鉄を摂ることが重要になります。
鉄を含む食品には、次のようなものがあります。
牛肉、豚肉などの赤身肉
まぐろ、かつおなどの赤身魚
卵
豆腐、納豆などの大豆製品
鉄を強化した乳児用シリアル
育児用ミルク
鶏肉や白身魚も優れたたんぱく源ですが、鉄を補うという点では、牛肉、豚肉、赤身魚なども早い段階から選択肢になります。
育児用ミルクをおかゆやスープに混ぜる方法もあります。母乳栄養を否定するものではなく、調理素材として利用することもできます。
すべてを毎食そろえる必要はありません。まずは、鉄を含む食品を毎日のどこかに入れることから始めてください。
卵白を必要以上に遅らせないでください
日本の公的なガイドでは、固ゆでにした卵黄から始め、慣れてきたら全卵へ進めます。
一方で、食物アレルギーが心配だからと卵の開始を遅らせても、アレルギーを予防できるという科学的根拠はありません。
赤ちゃんの体調がよい日に、十分に加熱したものをごく少量から試します。食べられた場合は、一度だけで終わらせず、無理のない範囲で継続します。
卵白へ進むことが心配な場合、当院では、固ゆで卵の卵黄のうち、卵白と接していた表面部分から試す方法を案内することがあります。
次のような場合は、卵を始める前に小児科やアレルギー科へご相談ください。
アトピー性皮膚炎や湿疹が強い
卵を食べた後にじんましんや嘔吐が出た
他の食品でアレルギー症状が出た
医師から食物アレルギーを指摘されている
食後に全身のじんましん、繰り返す嘔吐、咳、ゼーゼー、呼吸困難、ぐったりするなどの症状があれば、速やかに医療機関を受診してください。
BLWとは何ですか?
BLWは「Baby-Led Weaning」の略で、赤ちゃんの自発性を尊重して補完食を進める考え方です。
赤ちゃんが自分で食べ物を持ち、口へ運ぶ方法がよく知られていますが、BLW=手づかみ食べだけ、ではありません。
BLWの中心にあるのは、
赤ちゃんの空腹と満腹のサインを尊重する
無理に口へ押し込まない
赤ちゃん自身が食べるペースを決める
家族と一緒に食事を楽しむ
食品の味、匂い、形、感触を経験する
という考え方です。
ペーストやスプーンを使っても構いません。赤ちゃんが持てるスプーンを用意したり、保護者がスプーンを口元へ運び、赤ちゃんが口を開けるのを待ったりする方法もあります。
完全なBLWにこだわらず、従来の補完食と手づかみ食べを組み合わせても問題ありません。
BLWで窒息や鉄不足は増えませんか?
2026年に公表された系統的レビューでは、BLWと従来のスプーン給餌を比較した4件のランダム化比較試験、合計898人が検討されました。
その結果、BLWによって窒息や鉄不足が増えるという明確な差は認められませんでした。
ただし、4件中3件は、窒息予防や鉄、エネルギー密度について保護者に指導するBLISSという修正版BLWの研究です。
したがって、この結果を「自己流のBLWでも安全」と解釈してはいけません。安全な姿勢、食品の形状、見守り、鉄を含む食品について学ぶことが前提です。
BLWと従来のスプーン給餌を比較した2026年の系統的レビュー
BLWを安全に行うための条件
BLWを取り入れる場合は、次の条件を守ってください。
首がすわり、上体を安定して起こせる
ハイチェアなどで足元も含めて姿勢を安定させる
必ず大人がそばで見守る
歩行中、ベビーカー、自動車内では食べさせない
泣いているときや眠そうなときには食べさせない
食品は指で簡単につぶせる柔らかさまで加熱する
丸い食品や硬い食品をそのまま与えない
保護者が乳児の窒息時の応急手当を学んでおく
消費者庁・食品による子どもの窒息や誤嚥に注意
NHS・赤ちゃんの食品を安全に準備する方法
補完食とBLW、sDORの違い
この3つは競合する方法ではありません。それぞれ答える問いが違います。
考え方 | 主な役割 |
|---|---|
補完食 | 母乳やミルクだけでは不足する栄養を、何で補うか |
BLW | 赤ちゃんの自発性を尊重し、どのように食べるか |
sDOR | 保護者と赤ちゃんが、何を決めるか |
sDORは「食事における責任分担」という考え方です。乳児期の補完食に応用すると、次のようになります。
保護者が決めること
何を用意するか
いつ食べるか
どこで食べるか
どのように安全な形で出すか
赤ちゃんに任せること
食べるかどうか
どのくらい食べるか
どのペースで食べるか
一口でも食べたら成功です。完食させるために、嫌がる口へスプーンを押し込んだり、動画で気をそらしながら食べさせたりする必要はありません。
Ellyn Satter Institute・食事における責任分担
手作りにこだわりすぎなくて大丈夫です
今回の調査では、76.2%の保護者が「献立を考えるのが大変」、48.3%が「作るのが面倒・苦痛」と回答しました。
補完食は毎日のことです。すべてを手作りしようとすると、保護者が疲れ切ってしまいます。
ベビーフードには、
調理時間を減らせる
月齢に応じた柔らかさを確認できる
家庭では少量だけ調理しにくい食材を試せる
外出時や災害時にも使える
という利点があります。
不足している食材を追加したり、家庭の料理と組み合わせたりすれば十分です。
出汁を取る前に、睡眠を取りましょう。
保護者が休むことは手抜きではありません。親子が無理なく補完食を続けるための、重要な育児支援です。
こんなときは小児科へご相談ください
体重が増えない、または減っている
7~8か月になっても食形態が進まない
むせや咳き込みが多い
食事のたびに強く泣く
食後にじんましん、嘔吐、咳などが出る
湿疹が強く、卵の開始が心配
食べられる食品が極端に少ない
保護者が補完食に疲れ切っている
インターネットの記事だけでは、赤ちゃんの姿勢、口の動き、発達、皮膚の状態までは判断できません。迷ったときは、実際に赤ちゃんを診てもらいましょう。
かるがもクリニックの補完食教室
今回ご紹介した日本の調査の筆頭著者は、かるがも藤沢クリニックの江田明日香先生です。
当院では、江田先生のもとで補完食について学び、子ども摂食アドバイザー資格を取得した看護師が補完食教室を担当しています。
教室では、単に「何を何グラム食べるか」を説明するだけではありません。
補完食を始めるタイミング
10倍がゆからの進め方
鉄を含む食品の取り入れ方
卵黄・卵白の進め方
食物アレルギーへの備え
赤ちゃんが食べやすい姿勢
食品の硬さと形
BLWと手づかみ食べ
窒息を防ぐための注意点
保護者の負担を減らす方法
などを、家庭で実践できる形でお伝えします。
「ネットの情報が多すぎて、何が正しいのか分からない」
「実際の食品の硬さや大きさを見てみたい」
「パートナーと一緒に学びたい」
という方は、ぜひご参加ください。
よくある質問
補完食はいつから始めますか?
日本では生後5~6か月頃が目安です。月齢だけでなく、首のすわり、座位、食べ物への興味、舌で押し出す反射なども確認します。
最初は必ず10倍がゆですか?
必須ではありません。10倍がゆを最初の練習として使うことはできますが、慣れてきたら水分を減らし、鉄やたんぱく質を含む食品も加えていきます。
卵白は何か月から始めますか?
一律に何か月まで待つという決まりはありません。固ゆで卵黄に慣れたら、体調のよい日に十分に加熱した卵白をごく少量から試します。湿疹が強い場合や、以前に症状が出た場合は医師へ相談してください。
BLWは手づかみ食べだけですか?
いいえ。赤ちゃんの空腹・満腹や食べるペースを尊重することが中心です。ペースト、スプーン、手づかみ食べを組み合わせても構いません。
BLWなら窒息しませんか?
窒息の危険がなくなるわけではありません。安全な姿勢、十分に柔らかい食品、危険な形状を避けること、大人の見守りが必要です。
ベビーフードを使ってもよいですか?
問題ありません。月齢表示だけでなく、含まれる食材や栄養成分を確認し、家庭の料理と組み合わせて利用してください。
謝辞
補完食教室やこのブログは、藤沢市にある「かるがも藤沢クリニック小児科」の江田明日香先生からご教授いただきました。深謝申し上げます。
https://karugamo-fujisawa.com/
※本記事は、一般的な医療・栄養情報を提供するものです。補完食の開始時期や進め方は、赤ちゃんの発達、成長、基礎疾患、食物アレルギーなどによって異なります。個別の診断や治療に代わるものではありません。
最終更新:2026年7月
監修:かるがもクリニック院長
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