シャーガス病について

献血でシャーガス病、国内初確認…製剤に使う

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130814-OYT1T01508.htm

 詳しい方はわかると思いますが、抗体陽性だけでは必ずしも現在の感染を意味しません。急性期であれば血液標本で見つけることが出来ますが、慢性期では無理です。記事に出ている「病原体の遺伝子が検出」とはPCR検査でしょうか?

 中にはxenodiagnosisといって、疑いのある患者さんの手足からサシガメに血を吸わせてその糞から病原体を探して診断するということもあるようです。

 さて、先ほどサシガメと書きましたが、カメムシの仲間のようです。中南米にいるサシガメの中には吸血性を持つのもが居ます。広く脊椎動物を刺しますが、ヒトにももちろん刺します。日中は土壁に潜み、夜な夜なヒトの皮膚(柔らかい部分、特に目の周り)を刺し1時間以上かけて吸血します。

 日本脳炎やマラリアと違い、吸血するだけでは感染は成立しません。サシガメは吸血後糞をします。ヒトが起きた後、吸血部位が痒くなるで手でこすります。その時に糞が吸血部位に入り感染するのです。

 病原体は、クルーズ・トリパノソーマ Trypanosoma cruzi という原虫です。大きさは赤血球よりも少し大きいくらい。人を始め脊椎動物の血中及び、サシガメなどの吸血動物の腸管を主な寄生部位とします。この複雑な生活環がシャーガス病の感染経路を多岐にわたらせます。具体的には、サシガメの吸血以外にも

  • サシガメの糞やサシガメそのものを摂取することによる感染
  • 輸血による感染
  • 臓器移植による感染
  • 母子感染(先天性感染)
  • 事故

 が挙げられます。詳しくは、「mal de chagas 誰も書かないシャーガス病のはなし:シャーガス病 Q&A (2-感染経路)」を御覧ください。

 中南米では、アサイージュースなどでも感染することがあるようです(2010-05-16 人気食品が感染源に? アサイーからシャーガス病)。日本では病原体であるクルーズ・トリパノソーマは自然界には存在せず、また輸入品のアサイーも殺菌しているようなので、問題ないでしょう。

 さて、ニュースには中南米出身と書かれていますが、おそらくは移民の方だと思います。中南米の国々は長い期間日本人の移民を受け入れてきたという歴史があります。日系二世・日系三世の方々が日本に帰国した際にシャーガス病を日本にもらたす可能性は以前から指摘されていたようです(日本にシャーガス病が発生 出稼ぎ者が持ち込む サンパウロ新聞WEB版より。)。

 誰も得体のしれない感染症が来ると戦々恐々とするものです。しかし、吸血性のサシガメが通常存在しない日本では、普通の生活をしていればシャーガス病に感染することはありません。正しい知識が広がることを望みます。

おまけ

 何とタイムリーな話ですが、シャーガス病を扱ったマンガが今年の1月から6月まで連載されていたということです。「ネメシスの杖」です。

http://afternoon.moae.jp/lineup/192

 作者の朱戸アオさんが、今回のニュースに関してブログを書いています。とても丁寧に書かれています(シャーガス病について)。単行本ができたら買います。

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