千葉で日本脳炎「25年ぶり?」
先月の9月、千葉で0歳児が日本脳炎になったという報道がありました。
http://www.chibanippo.co.jp/news/national/277550
0歳児が日本脳炎 千葉県内25年ぶり
2015年09月12日 09:28
千葉県は11日、香取郡内の0歳の男児が日本脳炎と診断されたと発表した。発熱と意識障害、脳神経まひの症状があるものの、命に別条はないという。県内で日本脳炎が確認されたのは1990年以来、25年ぶり。
県疾病対策課によると、男児は8月18日から発熱があり、同月21日に意識障害、脳神経まひを起こし旭市内の医療機関を受診し、即日入院した。
県衛生研究所による検査の結果、病原体の日本脳炎ウイルスを確認した。海匝保健所が感染経路を調査している。
http://www.chibanippo.co.jp/news/national/277550
命に別条はないとはいうものの、より良い回復を願っています。
その後の調査で感染経路は「感染場所は県外でないことが分かったが、詳しい感染経路については結論に至らなかった」ということです。
日本脳炎は不顕性感染や軽症が多いですが、100-1000人に一人の割合で重症化します。致死率も決して低くはありません。
さて、日本脳炎ウイルスはブタの体の中で増殖します。その血を蚊が吸い、さらにヒトにも刺すことで日本脳炎の感染が成立します。
千葉県には比較的養豚場が多く、今回の日本脳炎発症はそのブタが感染源だったことは十分に予測されます。国立感染症研究所では各都道府県のブタ日本脳炎抗体保有状況を定期的に調べています。そこでは乳児が感染したと思われる8月上旬にかけて千葉県でブタの日本脳炎抗体陽性率が上がっているのがわかります。
養豚場が近くにあるなどリスクのある地域では、生後6ヶ月から日本脳炎ワクチンを接種したほうがいいでしょう。当院でも親の仕事などで東南アジアに帯同するお子さんには、早めの接種を行っています。
さて、千葉の報道は「25年ぶり」と書いてありましたが、私は懐疑的です。ブタでの抗体保有率を考えてみると、過去にあった原因不明の急性脳症を調べてみれば、日本脳炎の感染が見つかるかもしれません。
ちなみに1991年に沖縄の米兵が日本脳炎に罹った事例が報告されて以降、日本脳炎流行地域に赴く米軍関係者はIXAROという日本脳炎ワクチンを接種しています(「日本の」日本脳炎ワクチンとは互換性無し)。
沖縄米軍の日本脳炎発症経過は、以下の報告が詳しいです。アメリカCDC調査チームの意気込みが感じられます。
感染症新時代を追う-ウエストナイル熱,そして日本脳炎-
a:17793 t:2 y:2