FUD:ワクチンへの不安、不確実、不信

某医療系MLに流した内容です。


少し前の報道ですが

中ロがワクチン「偽情報」拡散 欧米製不信あおる、EU報告書
 【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)の外務省に当たる欧州対外活動庁は28日、ロシアと中国の政府系メディアが欧米メーカーの新型コロナウイルスワクチンへの不信感をあおる偽情報拡散や、情報操作を行っているとの報告書を発表した。
https://nordot.app/760325862912884736

 典型的なFUDマーケティングの手法です。欧米メーカーのワクチンを貶めることで、自分たちのワクチンを売り込もうとうとしているのでしょう。

FUDとは不安(Fear)、不確実(Uncertainty)、不信(Doubt)のことで、根拠が薄いか全くない(不確実)にも関わらず、大声で不安と不信を掻き立ているマーケティングです。

「ワクチンを打つと不妊になる(自閉症になる)」
「効果がないのを分かっているのに、医師はワクチンを他人に勧めている」
「ワクチンを勧めている立場なのに家族には打たせていない(実際は医学的必要がなけれ、接種する必要はない)」
「医者や製薬会社はワクチンで不当に儲けている」
「不可抗力といいながらも、副反応が出たのは見落としがあったのでは」
などなどです。

 最近ではWHOがこれを インフォデミック(information + pandemic)と読んでいます。大量の情報が氾濫する中で、不正確な情報や誤った情報が急速に拡散し、適切な情報を選択するのが難しくなった状態です。

 「FUDをどうしてする人がいるのですか」と尋ねられたことがあります。簡単に言えば「FUDマーケティングを仕掛けることで、自分が一時的にでも優位な立場に立てて、何かしらの利益がある」と思っているからするのでしょう、と答えました。ただ単に気に入らない相手を困らせたい、という動機もあるでしょう。

最近はMICE(マイス)モデルというのがあるようです。
【こびナビ公式】誤った情報の発信者は ”MICE モデル” で攻撃してくる【ミスバスターズ】
https://www.youtube.com/watch?v=ZUVevdZ-hHI

M
Money(お金)→利害関係
I
Ideology→政治的心情
C
Compromise/Coercion(すり合わせ)→自分のこれまでの考えとの整合性(あいつがいい思いをしてきているのは、なにか悪いことをしているに違いない)
E
Ego(自己承認欲求)→自分の話を聞いて認めてほしい

 このような動機で、正確さに関係なく自分の情報を広めたいという考える人が出てきます。

 MICEモデルを使って攻撃する人は、不正確な情報を発信している場合が多いことですね。

 典型的な例が映画「Vaxxed: From Cover-Up to Catastrophe」です。欧米ではMMRワクチンで自閉症になる、という言説が日本の「HPVワクチンで長期的な体調不良になる」という以上に喧騒されており、この映画は自閉症になるという側から出たものです。日本でも2018年に「MMRワクチン告発」という題名で上映されそうになりましたが、配給会社の判断で中止されました。私は一度限りの上映会を観ましたが、FUD/MICEを上手に使っていました。
 前知識がない人が観たら、普通に反ワクチンになっていたことでしょう。

 そういえば、「HPVワクチンを推奨するなら、個人の希望や医学的適応に関係なく家族や自身に接種させて、それを表明せよ」という意見はどうなったのでしょうね?以前も書きましたが、日本ではHPV4を男性でも年令に関係なく接種できるようになりましたが、自分は打ちました、ということは未だに聞いた事はありません。

子宮頸がんワクチン打ちました。今まで接種表明しなかった理由と大人のHPVワクチン
https://note.com/rikomuranaka/n/nfce34bb2f491

 今更驚きもしないのですが、将来子宮頸がんで苦しむであろう子孫とその家族がこれらのやり取りを見たらどう思うか、と考えるのと同時に、新型コロナワクチンが日本では「今の所」HPVワクチンの二の舞を演じることにならなくてよかったと思います。
(以下略)