保護者にHPVワクチンの大切さを分かってもらうために
最近HPVワクチンを接種する人たちが増えてきました。
某中高での卒業生公演で、HPVワクチンの大切さを熱演した産婦人科医もいるようです。
そういう中、子どもは乗り気だけど、保護者が乗り気ではない(むしろ反対)ということもあります。「(母親同士で話し合った結果)私達は接種させない方向で考えています」という人もいます(もちろん父親でもありえます)。
娘を大事に思う心情ではあると思うのですが、HPVワクチンの安全性がいろいろなところで明らかになっている今、必ずしも合理的な考えとはいません。
どうしてこういうことが起こるのか、行動経済学の考えから説明していこうと思います。
行動経済学とは
行動経済学は「人は必ずしも合理的な判断をしない」という考えに基づくものです。人の判断や思考にはバイアス(認知の歪み)が混入してしまいます。
バイアスの一部を紹介すると
- 利用可能性ヒューリスティック
- 現在バイアス・時間割引率
というのがあります。
前者は、人は身近な記憶(マスコミの報道など)で判断するものです。特に最初に受けた印象が特に心に残る傾向があり、これを錨(アンカー)にたとえてアンカリングともいいます。
数年前にテレビなどで何度も出てきた少女たちの不随意運動(最近はテレビででなくなりましたよね)がこれに当たります。自分の娘を、自分の判断でこのようにさせたくない、という心情はとても良くわかります。
後者は「将来の影響を軽く・現在の影響を重く感じる」ものです。簡単にうと「明日のダイエットよりも、今日のケーキ」です。
現在母親が下さなくてはいけないHPVワクチンの接種の判断は、母親にとってとても重いものです。その一方で娘が将来するかもしれない「接種・子宮頚がん検診」は、母親の心理的負担は軽減できるおです。
これを図示したものがあります。
これを見てもわかるように、HPVワクチンを接種させない数十年で、子宮頸がんのリスクは確実に上がり続けます。
対策は?
行動経済学ではナッジというものがあります。「ちょっとちょっとこっちのほうがいいんじゃないの」という肘付き(Nudge)です。選択肢を制限せずに他人行動修正を促すもので、強制・洗脳とは違います。
HPVワクチンでいうと参照点を変えることです。現在の健康状態を参照点とすると「予防効果よりもワクチンの副反応が怖い」となってしまいます。そうではなく「接種するリスク」だけではなく、将来の「接種しないリスク」も考えてみましょう。
岡山県の子宮頸がんを予防しましょう、というサイトがあります。
https://www.pref.okayama.jp/site/528/
ここには「赤ちゃんと子宮を一度に失った、希さんの症例」というものがあります。これが参照点を変えるナッジですね。
皆さんは「子宮頸がんのために子宮ごと取り出された胎児」を見たことがありますでしょうか?私はこのような形で自分の家族と対面したくはありません。
世田谷区の場合、公費接種であれば役所に問い合わせれば問診票を送ってます(地方自治体によってはこれまでの予防接種歴をすべて説明しないといけないようですが)。また、このコロナ禍で、背定期接種の期限を過ぎても接種できる場合もあります。
保護者の方は、是非ともお問い合わせよろしくおねがいします。