「脱ステロイド」報道へのファインプレー

9月7日に放映された「世界仰天ニュース」で、脱ステロイドについて称賛する番組があったようです。

 一週間後に、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本臨床皮膚科医会、日本皮膚免疫アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児皮膚科学会の各種学会、それに患者会の日本アレルギー友の会から連名で抗議し、問題点を指摘しています。

 指摘された問題点を抜粋します。

  1. ステロイド外用薬の使用を、種類も使用法も区別すること無く否定し、ステロイド外用薬を用いた治療中の患者さんに恐怖と不安をあおる内容であったこと。
  2. 脱ステロイド「療法」という用語を用いることで、ステロイド外用薬を使わないことをひとつの治療法として、あたかも疾患が治るかのごとき期待を抱かせる内容であったこと。
  3. ステロイド外用薬を使うことの危険性を把握し、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に沿って診療を行っている医師と患者さんに不必要な不安と妨害を与えるものであったこと。
  4. 番組を視聴した結果、多くの健康被害をもたらす可能性が高いこと。

【重要】2021年9月7日に放送された日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース」に関して抗議文を提出したことについて

 一時期日本で「脱ステロイド」が流行し、「多くの健康被害」を出したことがあります。奇しくもテレビが発端です。

そして九二年、ステロイドバッシングは隆盛を極める。この年の七月、テレビ朝日「ニュースステーション」で一週間にわたりステロイド叩きの特集が組まれ、久米宏が「これでステロイド外用剤は最後の最後、ギリギリになるまで使ってはいけない薬だということがよくおわかりになったと思います」と発言したのだ。これを機に日本の皮膚科業界は大変なパニックになる。ステロイドと皮膚科不信に陥つたアトピー患者たちが民間療法に走り、「ステロイド断ち」の時代に入ったのだ。いわゆるアトピービジネスの勃興である。そして多くのアトピー患者がその混乱の犠牲者になることになる。

注意:九二年とは1992年(平成4年)。西暦2021年から29年前のことです。
アトピーの女王 雨宮 処凛 p.74-75

 経験の少ない私でも、極端な食事制限(当時はアトピーはステロイド外用剤を使わず食事制限をすれば治ると言われていました)で摂食障害になったお子さんや命を落としたお子さんを知っています。専門のドクターであれば、もっと大変な事例もあったと聞いています。
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 抗議書に関わった人たちは、もうこんなことを繰り返してほしくないから、積極的に行動したのでしょう。それにしても、放送があってから一週間で各学会・団体をまとめ抗議書を作った人たちは、本当にファインプレーだったと思います。