コロナウイルスの脳炎脳症対策

福岡にいます(外来小児科学会)。

最近になり、子どもへのコロナウイルス感染が多くなってきました。悲しいことですが、健康でも脳炎脳症で命を落とすお子さんも報告されています。

また、新型コロナウイルス感染症での熱性けいれんも多いと言われています。当院でもコロナと診断した乳児が院内で痙攣を起こしたことがあります。アメリカなら新型コロナウイルスワクチンが接種できる年齢です。

新型コロナウイルス感染症による脳炎脳症を起こさないようにするためには、

  • 新型コロナウイルス自体罹らないようにすること
  • 感染した場合も、脳炎脳症にならないような対応をする

です。対策としては、マスク・人流の制限・ワクチンなどです。一つだけではリスクをゼロにすることはできませんが、リスクは少しずつ下げることができます。

マスク

夏の前に、「子どもの熱中症の予防のためにも、屋外ではマスクは積極的に外すように」というお知らせが流れてきました。

私はミスリーディングになるのを恐れ、注釈付きで流しました。
https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20220624-1
しかし、一部では「厚労省がマスク外しを認定した」と誤解されてしまい、第7波の素地になったのかもしれません。

日本救急医学会も「高齢者や小児においてマスクの着用が熱中症の危険因子となるか 否か の報告はない 。」としています。
https://www.jaam.jp/info/2022/info-20220715.html
米国小児科学会も世話をする人がマスクを着用していると、子どもの言語発達に害はあるという根拠はないとし、マスクの重要性を説いています。

残念ながら、といいますか、しばらくは医学上マスクをできない人以外は、マスク装着をおすすめします。
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=117

人流

政府は3年ぶりに「人流制限しない夏休み」を実行し、様々なイベントが行われてました。中には感染症対策が十分ではないせいか、感染症が増大しています。
観光客を受け入れた沖縄や阿波おどりを行った徳島では、患者数が増大し医療を逼迫しています。

沖縄 “医療破滅的な状態”医療従事者感染 観光客の救急対応で
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220812/k10013766861000.html

分娩や早産の妊婦の緊急受け入れ休止 中央病院、院内感染受け(徳島病院)
https://www.topics.or.jp/articles/-/757617

関係者は阿波おどりとの関連は不明ともしていますが、徳島県だけ特異的に増えている理由について、コメントするべきでしょう。

なお、多くの人は阿波おどりを実行したこと自体を問題にしているのではありません。感染対策を検証しないで「ノーマスク・密」で阿波おどりを実行したことを問題にしています。

演舞中のマスク着用「必要なし」 阿波踊り実行委、コロナ対策確認
https://www.asahi.com/articles/ASQ5071ZRQ50PTLC004.html

ワクチン

以前は子どもは罹りづらいし、感染しても軽症とも言われていましたが、前述のように脳炎脳症で健康なお子さんも亡くなっています。
以前から話していますが、子どものコロナワクチンも積極的に否定する理由はありません。
今の所、コロナワクチンで神経学的合併症のリスクを下げられると考えれています。
https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20220818-1

解熱剤の適切な使用

お子さんでは熱冷ましをアセトアミノフェン(カロナールなど)やイブプロフェン(ブルフェンなど)は安心して使えると言われています。現在供給が逼迫していますので、適切な使用をお願いします。

結局複合的な対策でリスクを下げるしかない

結局の所日常生活を営みながらリスクを下げるためには、複合的な対策が必要です。また、正しい知識を正しく伝える必要もあるでしょう。

夏休みというボーナスタイムで子どものワクチン接種を重点的に行なっていた自治体もありました。鹿児島県医師会のように、緊急声明をだして子どものワクチンを促すアクションを取ったところもあります。

新型コロナ 子ども守るため「ワクチン早期接種を強く勧める」 5~11歳は2回目、12~19歳は3回目を 鹿児島県医師会が緊急声明

https://373news.com/_news/storyid/161618/

夏休み明けの「波」は

もし、子どもたちのワクチン接種が十分ではなく、また感染症対策も適切でなければ、夏休み明けには早晩「波」が来ることでしょう。
今小児科界隈では、RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスなども流行っていますが、さらにインフルエンザも加わるかもしれません。

事実、南半球のオーストラリアでは「冬」シーズンにインフルエンザが流行しています。
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/influenza_world/

このままでは、様々な「波」が押し寄せてくるかもしれません。