今日から新型コロナは5類

本日から新型コロナウイルスが5類になりますが、これでコロナウイルスが変化するわけではありません。変わったのは、国が出す補助(公助:つまりはお金)が減ることです。

 卑近な例では診察料が上がる(高校生までは原則公費負担がありますが)ことや、東京都では公的食料支援がなくなる、などありますが、重症者などの入院調整が困難になり都道府県によって差が出るのではないかと思います。

 2023/05/05、WHOが新型コロナウイルスの国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)の宣言を終了する旨を発表しました。しかし、これはコロナが終わったということを意味するのではありません。
WHO事務局長のテドロスも、

"今、どの国も一番やってはいけないことは、このニュースを理由に油断したり、構築したシステムを解体したり、国民に「COVID19は取るに足らない」というメッセージを送ることだ"
とコメントしています。
https://twitter.com/WHO/status/1654477742904074242

 残念ですが、ウイルスの変異が活発で完全な集団免疫獲得が期待できない現状では、個のコメントは仕方がないでしょう。

 日本は第7波までは病死者はかなり少なかったのですが、第8波では多くの人が亡くなりました。これから来るであろう第9波では、更に多くの人が亡くなると予想されています。

「9波は8波を超えてくる大規模な流行になる可能性」エンデミック化する英国とは違う道をたどる日本のこれから
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/9th-wave-nishiura-2

 その一方で5類になることで診察や入院治療をやめる病医院が幾つか出ることでしょう。政府は季節性インフルエンザを診ていた医療施設なら同じく新型コロナも診ることができると考えているようですが、現状ではすべての医療機関が同様に診察できるとは限りません。

 ゴールデンウィークになり診察できる施設が減ったため、東京都でも見かけの陽性者は減っています。しかし陽性率は高く、実際の陽性者数はもっと多いと考えられます。しかしながら、5類になったあとは感染者数が適時報告されることも無くなり、実数は見えにくくなるかもしれません。

 何度も繰り返して恐縮ですが、これは強調させてください。2類から5類になるということは、公助が少なくなり、その分共助・自助が求められることになります。皆様もご安全にお願いします。

 当院では5類になっても当面の間は、検査体制や病児保育の体制は現状のまま行う予定です。ご理解とご協力をお願いします。

 最後に新型インフルエンザ対策でもご活躍した、WHO健康危機管理プログラムシニアアドバイザーの進藤奈邦子氏のご発言を引用させていただきます。

WHOの各国の対応についてのコメント

  • 日本のクラスター対策は大成功。各国のお手本。ハイリスクグループを守って死者を増やさなかった。
  • 日本の「3密」は世界で注目。3Cとして普及(Crowded places、Close-contact settings、Confined and enclosed spaces)。
  • 日本、中国(香港を含む)、ベトナム、タイ、韓国、シンガポール、独、スイスなど、データ収集力、分析力があり、公衆衛生の基本に基づいたきめ細かな対策が立てられた国は成功組。逆に対応が政治的になりすぎた国は収拾困難な状況に。
  • アジア各国はSARS、鳥インフルエンザ、MERSの影響もあり、知識、対策が国民の間で浸透していた。経験と準備が決め手。
  • ヘルスシステムの強さが死亡者数に反映。

「日本は成功組」、進藤氏がWHOの評価紹介
第61回日本臨床ウイルス学会「COVID-19―19人の専門家からのアップデート」
https://www.m3.com/news/iryoishin/830759

 個人的には「成功組」「失敗組」というカテゴリは好みませんが、実際のところ日本はそれなりに上手くこなしていたと思います。

 そしてこれからも日本は上手くこなせるか、は皆さんの手に委ねられています。