百日咳対策:DPT(三種混合)ワクチンキャンペーン
百日咳の「流行」
正確に言うと、世田谷区で百日咳の「報告」が増えています。百日咳の診断は積極的に疑わないとできないのです。世田谷区のドクターは積極的に調べているのでしょう(当院でも報告例しています)。
選択バイアス
この図を見て、「世田谷区だけ百日咳が大流行している」とは判断できません。上記の通り、検査数(分母)が大きくなれば報告数(分子)が大きくなるからです。
もともと世田谷保健所が管轄する人口も多いですし。
都民が一定の条件で都内のクリニックに受診し、都内全てのクリニックで同じ条件で百日咳を疑い、同じ方法で検査し一律に報告した状態で比較し、分母も計算した「率」で計算しないと、世田谷区だけ流行しているとはいい切れません。
対象者に偏り(バイアス)が生じることを「選択バイアス」といいます。世田谷区以外の管轄保健所では、報告として選ばれなかった百日咳患者がいるかもしれません。
つまり、検査をすれば他地域でも百日咳が「流行」している可能性はあるのです。
バイアスがありすぎると、因果関係を調べるのが困難となります。
首都大学東京の看護学科猫田泰敏教授の説明です。
バイアスについて知ろう
赤ちゃんの百日咳
百日咳の何が問題かというと、赤ちゃんが感染すると時として命にかかわるからです。百日咳にかかった赤ちゃんの動画があります。
百日咳を予防するためにはワクチンです。抗生剤の予防内服もありますが、流行中ずっと抗生剤を飲み続けるわけにも行きません。
百日咳のワクチン
ワクチンをする理由は2つあります。
- 赤ちゃん自身にワクチンをすることで、赤ちゃんに免疫をつける。
- 周りの人たちがワクチンをすることで、百日咳自体の感染を減らす(群れ免疫・集団免疫)。
日本の百日咳含有ワクチン(四種混合・三種混合)の問題は、2つあります。
- 日本では生後3ヶ月からしか接種できません(海外では生後2ヶ月)。
- 日本のワクチン(無細胞型)の効果は数年。
日本では生後90ヶ月以降の成人用ワクチンが無い(できました)
東京都の報告数をみても、5-19歳、20-49歳でピークがあります。それから、0歳、70歳からでもピークがあります。
赤ちゃんが百日咳になった場合、その感染源は、キョウダイ・両親・祖父母、それから医療関係者が多いです。
今まで成人用の百日咳含有ワクチンが日本では無かったので、対策に難渋していました。最近になり、一度発売中止になった三種混合ワクチン(DTP)が復活し、なおかつ成人にも使えるようになりました。
アメリカでの接種スケジュール
アメリカでは
- 4-6歳に2回目のブースター(日本よりも一回多い)
- 11-12歳に1回(成人用)
- 27-36週の妊婦(成人用)
- 一度も成人用ワクチンを受けていない人
となります。
海外の成人用百日咳含有ワクチン。
日本の現行の三種混合ワクチンを海外では"DTaP"といい、成人用のワクチンを"Tdap"といいます。簡単にうと、破傷風(Tetanus)の抗原量は同じで、ジフテリア(diphtheria)や百日咳(pertussis)の抗原量が大人では減ります。"aP"は無細胞型(acellular)百日咳の意味です。"wP"は全細胞型(whole cell )です。
日本では百日咳対策として、成人はTdapではなく、DPTを使うことになりました。
いろいろとご意見はあると思いますが、DPTを成人に使って特に危険ということはありません。現在、生後90ヶ月以上の人を対象にして、DPTの使用成績調査を実施しています(腫れ・発熱などの副反応が出ないか)。
また、海外留学などで渡航先からTdap接種の指定を受けている方は、現行どおりTdapを接種してください。
お値段
お値段は6,500円なのですが、最近の流行に鑑み、2018年6月25日から3,500円といたします。